ラストに至るまでの主人公の心情の細やかな変化が丁寧に描写されていて、素晴らしい作品でした。
何かを失い、変わらざるを得ない状況に直面して、打ちのめされない人はそうそういない。
寄りかかっていたものは何か。
支えになっていたものは何か。
本当に必要なものは何か。
もがいて傷ついて、取り返しのつかない地点に来たと絶望感を持ちながら、答えを見つけた主人公はきっと未来を掴むだろう。
そんなふうに感じました。
主人公の経験している音の無い世界、不協和音、そして彼が没頭していた音楽。
全ての表現がこの作品を表しています。
何もしない余白の時間は、自分との対話。
書くことが救いになるのは本当。