コハク

荒野にてのコハクのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
3.4
ベタといえばベタなんだけど、どこか心に残るロードムービー。家族や馬との信頼・愛情に満ちた世界から「荒野」へと追いやられ、競争と暴力にあふれた実社会を苦しみなら学ぶ少年。そして自らも人を傷つけ得る存在たることを自覚したとき、彼はもはや少年ではない。

成長を追ったジュヴェナイル作品の要素と、ロードムービーの要素が巧みに編み合わされた佳作だと思う。

「荒野」の寓意は、村上春樹の海辺のカフカに出てくる「砂嵐」に近いと思う(私はハルキストではなく、むしろハルキ作品に批判的なのだが)。

「君はじっさいにそいつをくぐり抜けることになる。そのはげしい砂嵐を……何人もの人たちがそこで血を流し、君自身もまた血を流すだろう。温かくて赤い血だ。君は両手にその血を受けるだろう。それは君の血であり、ほかの人たちの血でもある。」
「その砂嵐が終わったとき、どうやってそいつをくぐり抜けて生きのびることができたのか、君にはよく理解できないはずだ。いやほんとうにそいつが去ってしまったのかどうかもたしかじゃないはずだ。でもひとつだけはっきりしていることがある。その嵐から出てきた君は、そこに足を踏みいれたときの君じゃないっていうことだ」
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