回想シーンでご飯3杯いける

荒野にての回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
3.4
父子家庭の父が死に、1人で生きていく事を決めた少年が、引退宣告を受け殺処分が決まった競走馬と、叔母探しの旅に出るロードムービー。

馬が登場する映画と言えば、スピルバーグの「戦火の馬」が大好きなのだが、あっちの馬が役者としてかなりの演技派だったのに対して(CGで表情を付け加えていたと思われる)、本作の馬ピートは明らかに大根役者。いや、でもそれは恐らく意図的な演出で、「戦火の馬」のようなドラマ性ではなく、人間の気持ちとは関係なく毎日変わらず生き続ける馬や大自然を映し出す事で、少年の前に横たわる現実の厳しさや、少しずつ彼が成長していく姿を、対比として描きたかったのだと思う。

映像の雰囲気はドライで、かなり辛口の作品である。馬とのやり取りで少年が癒されるような場面は思った程なく、ある事件を境に、後半には更に厳しい展開が控えている。そんな辛い物語でも見入ってしまうのは、少年の孤独が、実は僕達も味わった事のある、思春期特有の感情だからなのだと思う。観客の感情が入り込む余白を残す。だからこその、ドラマ性を排除したドライな演出なのだろう。