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ガラスの城の約束のSPNminacoのレビュー・感想・評価

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)
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デスティン・ダニエル・クレットン監督なので、評判が悪いのは承知だけど観た。これは原作からして反面教師として捉えざるを得ない、よろしくない実話の例ではないの。当初ジェニロー主演予定だったのが諸事情で降板しその後長らく掛かってブリーさんの助け舟でやっと出来たらしいけど、原作者によほど気を使わなきゃなかったんだろか…とすら思ってしまった。せめて『ショート・ターム』の前に作られたのだったらまだわかる…だって、こんな子供たちのためにあの一時保護施設があるのではないの。
『ショート・ターム』は施設内に焦点を絞るため、敢えて問題ある親側の姿は出てこない。なので今回はその親とじっくり向き合うつもりかなと、終盤まではそう思えた。けれど、主人公ジャネットばかりでなく(末っ子だけは客観視できてせっかく脱出したというのに)家族が過去をすべて許してしまう、愛の話に落とし込んでしまうのは無理がある。自分に正直なのは大事だけども、それは…依存関係が続いてるのに気付かず、原作者が自分を納得させたい物語に過ぎないではないの。
勿論、親族以外あの一家に介入する者がないヒルビリーの疎外された、呪縛のような風土にしっかり目を向けてはいる。あの環境でなければ子供達はもっと早く逃げられたかもしれないし、父親もそこから逃げようとして踠き続けるも逃げ切れなかったのがよくわかる。悪魔やモンスターは自分の中にあった、と語らせているし、恐らく最も父親似で気に入られていたジャネットが鬼の形相で憎しみをぶつける場面には説得力があっただけに尚更、その闇が愛と混同されたままではよろしくないと思う。一応サヴァイヴした彼女も誰も、呪縛を断ち切れていない。そこまで深い悪影響を及ぼしてることが、むしろ一層哀れに思えるのだ。
弱さ脆さにシリアスな情感を込めたウディ・ハレルソン、時代ごとの子役と大人がよく似てたのは良かった。ただブリー・ラーソンの怒りの演技はいつも素晴らしいだけに、あれで納得するのは違和感。
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