真田ピロシキ

ちょっと今から仕事やめてくるの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.7
宗教染みた朝の体操から始まり「有給は体が弛むから取りません。上司には絶対服従します。心を持たなければ心が折れることもない。故に耐えられる。」と意味不明の社訓を斉唱させられるブラックカンパニー。当然のように上司はパワハラのクソカス。私はあまりまともな就職したことがないから実感がないけど実態としてはそんな間違っていないでしょ?自尊感情を奪われた人間が他者に不寛容になり足を引っ張りあって落ちていく無間地獄。出来る人の黒木華がああなるのも筋が通っている。部長ももっと上からのプレッシャーであんな人間になったのだろう。だがお前には同情しない。悶え苦しんで孤独に死ね。

本当はすぐに辞めれば10分で完結する。凄い高給をもらってるわけじゃないし他では出来ない特別な仕事でもなければ養う家族もいない。躊躇する価値がある程の仕事じゃないのに2回も自殺を試みてやっと抜け出せる。タイトル通り「ちょっとやめてくる」程度で良いものに高いハードルが架かっていて、それに自発的に従わされているのがジャパンのディストピア。最終的には「日本で見せかけだけの豊かさに惑わされて生きていく必要などない」と言っているようでこの国には最早希望を生み出せる余地がないんだなあと。反省する事なく新しい奴隷を外国から集めようとしてますものね。

ファンタジーともミステリーとも言える役柄の福士蒼汰が話に捻りを加えていて素直すぎるテーマの映画を退屈せず見ていられる。演出的にも奇抜な所はないがストレスなく見れて、ストレスしかない会社パートの話を相殺してる。間違った実力主義と現実的(笑)思想が蔓延った日本にはこの映画みたいな正論が重要。