ブタブタ

新感染 ファイナル・エクスプレスのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

『釜山行』

あのセンスない邦題つけた奴は万死に値します。

韓国からやって来た現時点でゾンビ(パンデミック系全部含めて)映画の世界最高傑作(断言)

特急KTX内の逃げ場のない閉鎖空間の中のゾンビ・パンデミック・ノンストップアクションの中で親子・姉妹・夫婦・若いカップルあらゆる関係を描きつつ危機また危機のつるべ打ち、最後まで全く飽きさせない傑作でした。

ジョージ・A・ロメロを創始者とするモダンゾンビ映画がキリスト教的な価値観、人類の「原罪」の下にあるなら『釜山行』は初めて儒教の精神の下で作られたゾンビ映画ではないでしょうか。
(キリスト教も儒教もそんな詳しくないので聞き流して下さい(ノω`))

それくらい人が生きる上での大事な事。
どんな状況下であっても「礼節を重んじる事」「師(目上の人)を尊ぶ事(身勝手な奴は除く)」正しい道正しい判断に従う、私欲に囚われず成すべき事を成す「義」や世が乱れた時こそ人としての「徳」が大事、人を思い遣る「仁」といったものがゾンビ映画で見られるとは思っていませんでした。

これは形を変えた『ポセイドン・アドベンチャー』のリメイクにも見えました。
逃げ場のない乗り物が舞台、迫り来る水の奔流は大量のゾンビに、決死の脱出を計る主人公グループが一人また一人と脱落して行く。

ソグ(コン・ユ)とサンファ(マ・ドンソク)の関係は最初は啀み合いの後、掛け替えのないパートナーとなる『ポセイドン~』の神父と刑事の二人を思わせました。
特にあの全くの役立たずのお荷物に見えて最後に漢(おとこ)を見せたホームレスは『ポセイドン~』の「水泳婦人」ばりの活躍で感動しました。

印象に残ったのは老姉妹のそれぞれの決断とその最後。
ソグ達がゾンビから逃れ車両を脱出、そして向こうの車両に妹が居るのを確認し敢えてその場に残ったのは諦めと言うより、足で纏いになるのをよしとせず自ら死を選んだのか。
そして妹も、やっとの思いでたどり着いたソグ達を車両から排除しようとする身勝手な利己的な人間達と同じ道を行く事をよしとせず自らも姉と同じ最後を選んだ。
そして高校生カップルも感染した彼女をただ抱き締め「どこにもいかない」と一緒に最後を迎えた少年。
それぞれが無力ながら運命を受け入れ人としての心を失わず誇り高い姿を見せたのでした。

そして彼らとは対照的に悪役を一手に引き受けていたのがバス会社のキム。
こういう役はゾンビ映画に不可欠ですし『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のクーパー『死霊のえじき(←この邦題も何とかならんか?)』のローズ大尉に劣らない悪辣で利己的な最高の屑人間でした。

ラスト近くでこのパンデミックの原因はファンドマネージャーであるソグが資金を「切れ」と命じたバイオ企業から端を発していた事が明らかになり、この時点でソグが生き残る事は無いのだろうなと思いました。

因果応報諸行無常🙏

そして実質的な主役・娘役キム・スアンは既に20本以上の映画出演を誇る人気子役で韓国の芦田愛菜?あんまり可愛くないとの意見も散見しますが、そこがリアリティがありますしとにかくもうこの子が泣かせます。

サンファの最後、皆を行かせて自分がゾンビの群れを引き受ける、ゾンビ映画では見せ場でありお約束のシーンですがサンファは気合いで自らのゾンビへの転化を止める。
そんなバカな…(笑)と思いつつ感動的な場面でした。

『ワールドウォーZ』の「ゾンビ雪崩」も更にパワーアップバージョンが見れましたし、デビッド・フィンチャーが監督との噂の『ワールドウォーZ2』は果たして『釜山行』以上のものを見せてくれるのか?

『アイ・アム・ア・ヒーロー』であれだけの事が出来たのですから日本のゾンビ映画も頑張って欲しいです。
『アイ・アム・ア・ヒーロー2』はなさそうですが『1』のゾンビ・パンデミックに「来栖(狂巣)」による超絶アクションが加わったら更にすごいことになると思うのですが。
ブタブタ

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