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エルネストのKUBOのレビュー・感想・評価

エルネスト(2017年製作の映画)
3.5
今日のレヴューはオダギリジョー主演「エルネスト」。公開初日に鑑賞してきました。

冒頭、広島を訪れたチェ・ゲバラが平和記念公園で献花するシーンから始まる。1959年7月と言えば「キューバ革命」がなされたまさにその年。慰霊碑の碑文「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」を読んだチェは言う。「なぜ主語がないのか?」「君たちはアメリカにこんなに酷いことをされて、なぜ怒らないんだ!」 革命後、キューバの政権の中枢には関わらず、他国に目を向けていたチェには、敵国アメリカに原爆を落とされた日本にいかに関心が高かったのかが、窺い知れる逸話だ。

(電車で移動中のチェたち一行が駅弁を買ったシーンに出てくる昔ながらのお茶の容器が懐かしかったな〜。小物にもこだわりがあっていいな〜(^_^))

作品は1959年〜1967年まで、私が生まれて幼児の頃、テレビが白黒からカラーに変わる時代、「鉄腕アトム」から「ウルトラマン」までの時代、キューバに生きたフレディ(オダギリジョー)の革命に捧げた短い人生を描く。

主人公のフレディ前村ウルタードは、日本人移民の父、ボリビア人の母を持つ日系ボリビア人。キューバに医学生として留学していたフレディは、チェ・ゲバラやカストロらと触れ合う内に心酔し、祖国ボリビアを救うためにボリビア政府軍との闘いに戦士として加わることになる。

日本語は冒頭とラスト以外、ほとんど使われない。言語は全てスペイン語で字幕が付くから、ほぼ洋画状態。オダジョーは方言にまでこだわって喋っているらしいんだが、英語と違ってスペイン語じゃ上手いも下手も全くわからん。でも違和感なかったみたい。

実在した人物を演じるオダギリジョーは、抑えた中にも激情をたたえた「革命の侍」を熱演。ただ2時間の内、1時間半はキューバの医学校での生活に当てられるので、ボリビアでの戦士としてのシーンはラスト30分だけ。その30分でも「予期せぬトラブルが多発」したせいなのか、単に予算の問題なのかはわからないが、戦闘シーンはわずかしかない。

私は「チェ 28歳の革命/チェ 39歳 別れの手紙」を見ていたので、この作品内で描かれていない部分も補完して見ることができたが、本作だけを見た人が「最後がしょぼい」と言っても仕方ないかもしれない。途中、恋人とのシーンを短くしてでもボリビアでの戦闘シーンをもう少し本格的なものにしてほしかった。

この作品を見て物足りなさを覚えた人は「39歳 別れの手紙」だけでも見れば、フレディとチェが共に命を落としたボリビアでの激戦の様子を補完できると思います。
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