たぬー

否定と肯定のたぬーのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.6
ユダヤ人のホロコースト研究者デボラがホロコーストはヒトラーの命令では無いと主張する歴史家アーヴィングから名誉毀損で訴えられた実際の事件を元にした話。

この作品の中で争われているのはホロコーストの有無ではなく、アーヴィングはホロコーストの否定を本心から言っているのか、それともナチズムを擁護するための欺瞞なのかという点。
弁護団は法廷でデボラやホロコーストサバイバーに発言する場を与えない。それは重箱の隅をつつき論点をすり替えるアーヴィングに足元を掬われる事態を避けるため。弁護団はアーヴィングが何年も書き溜めた日記や過去の言動からアーヴィングの欺瞞を法廷で明らかにするという戦法をとる。
これは法廷劇としてはエモーションが描かれず、カタルシスが生まれづらい。渋々弁護団に従うデボラに観客もストレスが溜まるので映画としてはあんまり好きになれなかったが、現在水道橋博士や町山智浩が維新の政治家や橋下徹とのSNSで繰り広げている論争はモロにこの映画の構図で面白い。
たぬー

たぬー