みかぽん

否定と肯定のみかぽんのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.9
自分が信じたいことをあたかも事実のように部分的に抜き取り、歪曲して流布するホロコースト否定論者を批判したユダヤ人歴史学者。そんな彼女を訴えるという、立場逆じゃん!な裁判を追う、なんと実際にあった物語である。

ユダヤ人へのホロコーストがなかったことを争うという、誰もが耳を疑うようなトンデモ裁判。個人的な記憶にも全くもって残っていないことから、恐らく(大方、〝そりゃ当然の結審でしょうよ〟と大した驚きもなく)その結果に納得し、読み過ごした記事であったのだと思う。

しかし映画という現在進行形の只中へ同じく身を置き、この裁判を追体験することで(例えば弁護団の過去の調査に基づいたブレない戦略、相手を追い込んで行く様を見て行くうちに)思わず握った両拳にぐんと力が入り続けていった。

この劇中でもスポット登場する極右のノイジーマイノリティーはいつもながらに煩わしいが、しかし何より、潜在していたあるサイレントマイノリティーが放った静かな一言があまりに衝撃的で、暫く言葉を失う展開となった(この劇中の肝中のキモである)。

物語は勧善懲悪を語っているのではなく、歴史の継承をすでに過去として葬むろうとする危うさについて警鐘を鳴らし、その証明までもが行われているのである。
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