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君の名前で僕を呼んでのcrimsonのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

よく人は、許されない恋や想いは、許されない故に燃え上がる病気のようなもの。と揶揄する。
まぁ、そういう場合もあるだろうが、そうでない場合もある。あると言い切れる理由が私にはある(笑)
偏見とかね、一般論とかね。そういう目で見るわけだ当事者じゃないと。
故に外野が色メガネで見ると、その想いが真っ白であっても何色にでも見えてしまうわけだ。
私は同性愛者ではないが、彼らの気持ちが男女間の恋愛と比較しても、何ら変わらないものだと思うし、むしろ男女間のそれよりは純粋なものかも知れないと思っている。


本作の映像の美しさや、全編に流れる美しいピアノの旋律。アランドロンの作品ばりに広がる地中海の魅力溢れる作風。文句なく素晴らしいと思う。

ただしだ‼︎
個人的には『ムーンライト』で感じられたような感動は本作ラスト直前まではなかった‼︎
なので本当に終盤までは感情移入し辛かった。
理由は一つ。エリオは恵まれているし、ワガママだし、若いとはいえ自己中心的過ぎる。
エリオはオリバーに対する満たされない想いをマルシアで補填したわけで、それはマルシアに対する裏切りだ。
あの夜マルシアはエリオを単なる一夏の相手としか考えてなかったかも知れないが、それでもエリオのことを愛していただろうことは、それまでの彼女の態度でわかる。

だからエリオは孤独ではなかった。
会話する相手がいるとか、周りに人がいるから孤独ではないという意味ではない。
望む人の愛を受けられない寂しさ?
そんなの当たり前だろう?
だからって身近なマルシアを踏み台に?
そこでエリオにイラッとしてしまう(笑)

勿論大勢の中の孤独だってあるし、様々な孤独があるわけで、それまでのエリオが孤独でなかったと言い切れないのは承知だが、現に彼は恵まれている。

だいたい主役2人ともルックス良すぎて腹が立つ(笑)


でもね。
本作でガツンとやられのは本当にラスト20分から。

オリバーが去り、悲しみにくれるエリオにマルシアが「怒ってないわ。大好き。一生の友だち」と手を差し伸べて赦したシーン。
そしてパパの漢気溢れる名セリフ。
もう号泣。ブレートランナーのロイの台詞に匹敵する名セリフ。
こんな大きな親父になりたい‼︎
パパからのエリオへの言葉は、他でもない私への言葉でもあり、観る人全てへの言葉。

そしてママもまた恐らくは知っていて認めてくれている。
真っ白な雪景色からの、オリバーが母国で婚約した報せ。その報せを聞いたママの表情で、ママも知ってたんだな。とまた涙が。
暖炉の前で静かに痛みと対峙するエリオ。

ハエが無言のエリオの想いを表現し、最後にママからの「エリオ」

こんなに詩的で美しい終わり方の映画は近年お目にかかっていません。
刺さる人には刺さる‼︎

最後に逆転サヨナラホームラン。
最後にもってかれる名作でした。
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