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満月の夜のKSatのレビュー・感想・評価

満月の夜(1984年製作の映画)
3.9
国生さゆりの「バレンタイン・キッス」とカオマの「ランバダ」を足して2で割ったようなメロディとリズムの妙に耳に残る音楽、それに合わせて踊る人々のリズム感のない謎の振り付け、コンサバとカジュアルが入り乱れたような形容し難いファッション、そして、ライオンのようにパーマされたパスカル・オジエの髪型。

この映画のパーティー場面の異様なダサさ。これはもはや、80年代のフランスを記録した重要文化財に指定してもいいレベルだ。撮られた時代によるところが大きいことは間違いないが、どうしてロメールの映画はこういうダサい場面があるのか?

噺自体は、ロメールらしい「二兎追うものは一兎も得ず」な恋愛譚。男友達に対しては彼氏のことを「一緒に住んではいるけどそこまで愛していないし、息が詰まる」といい、彼氏に対しては男友達(我らがファブリス・ルキーニ)のことを「何嫉妬してるの?彼は単なる友達よ」と言ってのけるヒロイン。部屋も、彼氏と同棲する部屋とは別に仕事部屋(兼連れ込み部屋)をパリに持つなんて、見習いのインテリアデザイナーとは思えない優雅さ。

というか、毎回ロメールの映画見る度に思うけど、これって映画だからこうなの?それとも、フランス人はみんなこんな感じなの?

もしフランスでこれが当たり前なら、絶対にフランス人とは友達になりたくないなあ。

そして、ヒロインを振り回してるのか振り回されてるのかわからないファブリス・ルキーニのキモさよ。オッサンになってからのルキーニは好きだけど、若い頃の彼は、なんで毎回こうもキモいのか。「インモラル物語」の時といい勝負だ。

いつもに比べて室内の色がグレーや白中心で落ち着いていて、なおかつわずかにドリーでカメラが前後に動くショットがあるなあ、珍しいなあと思ったら、撮影がレナート・ベルタ(オリヴェイラやシュミット、ストローブ=ユイレとよく組むスイス人)だった。
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