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満月の夜のmayのネタバレレビュー・内容・結末

満月の夜(1984年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


主人公のルイーズと恋人のレミは、パリ郊外の新都市マルヌ=ラ=ヴィラで同棲している。
ルイーズは、金曜日の夜はパリで徹夜で遊びたいし、土曜の朝はゆっくり眠りたい。恋人のことは好きだけれど、束縛はされたくない。
レミは、社交はあまり好きじゃないし、土曜の朝は早起きしてテニスが日課。恋人とはいつも一緒にいたい。
冒頭で二人の価値観やライフスタイルの違いが明確に描かれていた。

だからこそ、ルイーズは「愛されすぎるとうまく愛せない」、「孤独が必要」と言い、パリで自分一人の部屋を持つことにする。でも、連日パーティーに出掛け、男ともだちの間を放浪する。彼女に必要だったのは、孤独ではなくて、自由であったことが分かる。

女ともだちがルイーズに「同棲しているなら一緒に出掛けるのがふつう」と言う。しかし、ルイーズは既存の価値観にどこか違和感を抱いている。この映画は恋愛を軸にストーリーが構成されているけれど、既存の価値観の懐疑や新しい価値観への挑戦のようなものも描きこまれている。新しい恋愛(別居)、新しいライフスタイル(都市と郊外に家をふたつ持つということ)、養われる女性ではなく、自分の個性を発揮できる仕事を持ち、自立する女性の姿。

満月の夜は、眠れない夜であり、眠らない夜である。ルイーズははじめて決定的な浮気をして、眠れなくて、恋人に会いたくなって、夜中のカフェで時間を潰し始発電車でレミのもとに向かう。でも、レミの家には誰もいない。はじめての、ちゃんとした、孤独。
一方、レミは、自分の意志で眠らない夜を過ごしていたことを告白する。土曜の朝の日課だったテニスにも行かないと言う。新しい恋人は、あんなに強固だったレミのライフスタイルまで変えてしまった、という皮肉。

ふたりは別れることになって、ルイーズがパリに帰るために颯爽と歩いていく姿が、この映画のラストシーンとなる。ルイーズはきっと、ちゃんと生きていける。



メモ
・新都市マルヌ=ラ=ヴァレは政府により、人口の分散と郊外の活性化を目的として開発された。居住地と職場が一体化している場所。

・インテリアやファッションがとにかくかわいい、主演のパスカルオジェが装飾美術を手掛けた。レミの家のシンプルでモダンなかんじ、ルイーズのパリの家の全体がグレー系で統一されていて、でも小物たちで差し色をいれているところ、全てが好み。
最初はルイーズは赤やピンクのマフラーなのに最後は青色のマフラー。ルイーズの感情や状況が反映されているのかも、

・最後に来た道を引き返して、パリに戻っていくルイーズの後ろ姿は「月曜日のユカ」の最後のユカの姿を思い出した。悲しい出来事のすぐあとのはずなのに、どこか淡々としていて颯爽と歩き去るかんじ、

・ロメール映画の電話する女性たちが個人的にとてもすき、かわいい、
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