みずみずしくて美しい少年期のやりきれなさ。
小明に惚れた男はみんな不幸になっていく…
あどけなさがありながら、ファムファタールとして男を破滅させる女でもある。
ハニー・小虎・医者・小四…
主人公の小四(張震)は建国中国学校の試験を受けるが、昼間部に落ちてしまい夜間部に通うことに。
夜間部の生徒は素行が悪く、小公園という不良グループが幅をきかせていて小四も彼らと仲良くなっていく。
父親は世渡りが下手くそだが、同級生の汪の口利きで小四を昼間部に転入させようと画策しているが…暴力沙汰が影響してなかなかうまく行かない。
ある日、小四は小明という少女と保健室で出会い、仲良くなるが、彼女は小公園のボス・ハニーの恋人で、ハニーは対立グループ217のボスを殺した疑惑で台南に逃げていた。
あるとき、小公園グループの滑頭のツテで中山堂ホールにて217グループのコンサートが行われていたとき、帰ってきたハニーが自分の縄張りでコンサートされたことに立腹し、217のボス・山東を呼び出す。
山東はハニーを連れて道路へ誘導すると、ハニーを突き飛ばして車で轢き殺させた。
このシーンに至ってようやく半分。「牯嶺街少年殺人事件」の始まりである。
この殺人を受けて、小公園グループは仕返しに山東を斬り殺すのだが、血で血を洗う抗争に唖然とさせられる。
しかし、ボス二人が討たれると、周りは何事もなかったかのように日常を再び取り戻す。
その中で小四だけは、そういった環境の中で心中に育っていた屈折した感情に翻弄されていく。
時代背景として、小四たちは中国から台湾に移り住んだ外省人ということ。
大人たちは故郷中国への思いを断ち切れずにいる中、
子供たちはエルヴィス・プレスリーやハリウッド映画などに興味を示して
中国よりもアメリカ文化への憧れを抱いているようだ。
作中にも小四の親友で歌の上手い「小猫王(リトル・プレスリー)」と呼ばれている少年がおり、彼はよく外国音楽を歌唱している。
小四がどんどん小明に惹かれていくのがていねいに描かれていて好感で、
ある夜、保健室でふと小明と見つめ合うシーンは、まるでこのまま時間が止まってしまいそうで目に涙が浮かんだ。
しかし、その後学校を退学になり、昼間部に転入しようと勉強に専念する小四を、邪魔するがごとくにひたすら愛情を求める小明は「貪欲な女」に映ってしまった。。。
小明は小四に対してこう言い放つ。
「あなたも結局ハニーと一緒」
その後に起こってしまったことを思うと…
「君なら立ち上がれるはずだ」
一体、小四は小明がどうなると思ったんだろうか。
まさか彼らの崇拝するエルヴィス・プレスリーの国で信仰されている宗教のように、復活するとでも?
そのセリフを聞くと、決して彼が怨恨などの気持ちをもっていなかったと思われる。
結末にただただ唖然としてしまったが、これが現実をベースにした話らしいので、当て推量するしかない。
青春期の思い通りにいかなさ、やりきれなさが叙情豊かに表現されていると言えると思う。
僕はとびきり好きなわけではないが。
ここからちょっと気になった点を挙げる。
ときどき、「誰が誰かわからなくなる」といった意見が見られるけど、
確かに中華系人名は分かりづらいけど、
さらに言えば、引きの画面が多い上に、真っ暗で顔が見えないシーンも多くて人名と顔が一致するのが中盤になってから、ということはある。
後、さすがに4時間はくたびれた。
美しいシーンが多くて、舞台となった家々も調度も、今の時代から見れば全部が骨董品で、すばらしいが(製氷機とかびっくりした)、
現在の無駄が省かれに省かれた映画になれていると、やはり冗長に感じる場面も多い。