これだけ総合的な物語、一度じゃ受け取れ切れない。
一面的に観れば、少年が抱える閉塞感と行き場のない生命力が破滅的な結末を迎えるという割とよくある話なんです。
でもそれだけじゃなくて、中国から台湾へ渡ってきた家族とその他の人々、台湾が抱えてる歴史、置かれている社会情勢。
それらが全て詰まってて、観てる側に迫ってくるんです。
主人公たちが住んでいる家が日本家屋だったり、日本刀も出てきて、台湾を日本が支配していたということを思い出させてくれる。
父が政治的な嫌疑をかけられて尋問される場面も、国民党が支配している台湾の政治的な緊張の中で生きていることを感じる。
そんな中で主人公を含むその家族がどう生きているのかまで描かれている。
理不尽なことばかりで未来に希望を持てない。
閉塞感が少年だけでなく全ての人に蔓延してるように見える。
夜のシーンの暗闇が本当に深くてほとんど何も見えないのがすごく印象的で象徴的なんですよね。
暗闇の中で抗争相手を襲撃するところとか。
主人公、小四の顔つきの変化も印象的で少年から大人への成長のようにも思えるんだけど、危うくて、破滅的な結末を予感させるんです。
誰もが通り抜けたであろう、思春期の危うさ。
"でも運の悪い人が多すぎる"
"社会は不公平すぎる"
この閉塞感は現代の日本にも通ずる部分があって、今この状況で観れてよかったです。
台湾や中国の歴史を学んでから観たらもっと多くを受け取れる気がするので、時間をあけてまた観たいなと思います。