このレビューはネタバレを含みます
「オカマ」と呼ばれた一人の少年。
彼は左足が先天的に悪く、歩くと内側に曲がってしまう。同級生に追いかけられては集団でイジメられる。
家に帰ると客を取り、麻薬に溺れる母親が待っている。最低の生活を送る少年。
ある日同級生に追いかけられているところを一人の麻薬の売人に保護される。
少年は彼に心を開かない。
もはや彼の心は疑心暗鬼と不安の中に閉じこもり、意固地になっていた。
そんな彼を救ったのは、売人の男とその彼女の女、そして彼と同じように身体の小さい少年だけだった。
リトルと呼ばれた少年は、やがて高校生になる。しかし、彼は相変わらず同級生にイジメられ、母親は麻薬と売春に溺れ、自分の居場所を見失う。
そのときにはすでに世話をしてくれた売人は死んでいて、その彼女だった女だけが彼を献身的に支えてくれた。
ある日、唯一友人として付き合ってくれた青年と月夜に照らされた浜辺で一度きりの関係を持つ。
しかし、学校の悪ガキが友人をたぶらかし青年を殴りつける。青年は友人を思って警察にも学校にも告発しなかった。
そしてその怒りを友人に指示した悪ガキにぶつけ、逮捕される。
彼は成人となる。
立派な金歯に腕時計、ネックレスをつけ、まるでいつかの売人のように。そして、やはり彼は売人として成り上がっていた。
高級車に乗り、爆音をかけ、若手をいびっていた。
ある夜、母の電話と共に忘れかけた人からの電話がかかってくる。
かつて自分を刑務所送りにした唯一の友人からだ。彼は今は飲食店を運営していると言う。謝りたいから飯を食べに来いよと、彼は言う。
翌日、彼は母親に会いに行くと、これまでの自分の行いを悔やみ、謝りたいと懇願され、売人を止めるように諭される。
そしてその夜、彼はかつての友人が営むダイナーに向かう。そこで慣れないワインと友人の作るディナーを食べる。
彼らはぎこちなく、過去のこと、そして現在のことを打ち明ける。
友人は愛称を込めてブラックあるいはニガーと呼ぶ。ニガーと呼ばれた男はうつむき加減に呟く。「俺はあれ以来一度もない」と。
二人はベッドに横たわる。
愛に飢え、愛を知らず、常に人格を傷つけられ続けた男は、歪んだ愛の末に本当の愛を友人に見つける。