ガンビー教授

昼顔のガンビー教授のレビュー・感想・評価

昼顔(2017年製作の映画)
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劇場を出るとき、他の観客が「めっちゃ怖かった。へたなホラー映画より怖い」と言っているのを耳にしたが、まさにそういう映画。

一応書いておくとドラマは全く見ていない。それでも映画はぜんぜん見られた。この作品はそもそも、キャラクターのバックボーンや人格についてくどくどと説明を加えようとはしていない。僕としてはそれぞれの登場人物の過去や背景についてただ想像するのみだし、それで全く問題なかった。というか、映画はそういうものであるべきだと思う。

映画を見る喜びというのが「入り口からは予想もしなかったところまで連れていかれること」だとすれば(そして時にその『予想もしなかったところ』というのは彼岸でさえあったりする)、その通りの驚きとサスペンスがもたらされる作品。

この監督さん、「撮る」ということが好きなのかな、と思う。このシーンをこうやって撮るのか、とか、ここ数秒のためだけにわざわざカメラ変えてるな、とか、細かいところで技巧を感じる。

ワンカットで切らないことにこだわっているのだろうと思われるシーンもいい。被写体を追っかけていくカメラにブレが少ない気がするんだけど、ひょっとして補正とかしてるんだろうか。ワンカットはことごとく良い。

誰が誰にどんな言葉を投げかけるか、が重要な転換点になる脚本も良くできていると思うけど、重要なところで心情をくどくどと説明的な台詞に乗っけたりすることはない。そこは映画として、映像で語っている。繰り返すけど、技巧が光る。シーンによってサスペンスもあればホラーも顔を覗かせる。

上戸彩がこんな映画映えする女優だったんだ、という驚き。本作では髪型のせいもあって顔が隠れがちになっている所が多い。あるいは、ハンカチで隠したりとか……これがいかにもコケティッシュな感じ。それだけでも、一見の価値ありだと思う。


この筋書き、ちょっとした賭けでもあったんじゃないかと想像した。一歩間違えれば、起きる出来事が唐突すぎてドラマ版のファンなどはついていけない過剰な劇場版になっていた可能性もある。それがこうして成立しているのは、展開に説得力をもたらす演出がしっかりしているから……以外にないんじゃなかろうか。
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