Hally

アンダー・ザ・シルバーレイクのHallyのレビュー・感想・評価

3.5
悪魔版ラ・ラ・ランド?

大好きなミッチェル監督作品が地元近くの映画館で観れる日が来たことに何よりも嬉しく思います。『アメリカン・スリープオーバー』を見るのにどれだけ苦労してそれこそ機会を逃しに逃してやっと見れた経験があるので感慨深かったです。A24配給なのもさすが今 勢いのある映画配給会社はお目が高いと思ったが 見たら根元から刈り上げられた。カンヌでの上映が終わった後に評論家から不評の報は聞いていたし、それこそ"カンヌが理解できなくても俺が理解する!"みたいな気でいた。個人的にミッチェル監督の作家性みたいなものは理解しているつもりが…。こっちの監督だと思っていたらあっちの監督だった。"あっち"はまだゲロ甘な知識と乏しい映画的視点しか持ち合わせていない私には中々理解できなかった。水の魔術師(私が勝手に呼んでる…)ぶりや色での対比構造だったりは相変わらずで良かった。映像から監督のこだわり、手の掛けようがビンビンに伝わる。手に張り付くコミックがアメスパだったり、雑誌の表紙と終盤の湖でのシーンの対比だったりいいよね。悪魔版ラ・ラ・ランドって海外のキャッチコピーは見終わった後では?が付くけど監督の事を詳しく知ると納得する。売れない脚本家として実際にLAに住んでた監督。映画の都ハリウッドのこの場所で彼は主人公同様揉まれ、揉まれ一作目の監督作『アメリカン・スリープオーバー』を世に送り出すまで苦節の日々を過ごし続けた。ハリウッドで揉まれ傷つき壊れてしまった破片がシルバーレイクの底に沈んでいるのだ。二作目『イット・フォローズ』がヒットしやっと十分な資金と機会と配給会社を得た監督が今作を世に送り出したのだ。砕けた破片を拾いあげたんだ。湖の底から。破片を背負って正に"浮上"の時をむかえた。そして描いて、世に示してみせた野心作こそが『アンダー・ザ・シルバーレイク』なのだろう。悪魔版ラ・ラ・ランドがドンピシャ的を得ているかは分からないけどなんとなくわかる気がする…。
ヒッチコック、リンチ、タルコフスキー、キューブリック…。俺には理解できる湖の底まで降りる事は出来ないけど よかったね。青春は全てを超える的な映画じゃなくてあなたが描きたかった、遂に描いたサイケデリックでカルトなこの映画に最大の敬意を。知識や感性や知識を備えてもう一度見たい。その時は湖の底に沈ませて欲しい。
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