JunIwaoka

ノクトラマ/夜行少年たちのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ノクトラマ/夜行少年たち(2016年製作の映画)
4.7
2016.10.27 @ 第29回東京国際映画祭

緊張した面持ちの若者たちがパリの街を行き交う。彼らが感情を見せるのはすれ違う際の僅かな目配せで、いったいなに者で、なんのために行動に移そうとしているかは知りえない。ほとんど説明のないまま冒頭のシークエンスによってすっかりこの世界に引きづり込まれ、こちらまで掌に汗が滲んでいる。
よくこのような映画がパリで撮られたなと思ったら、一連の事件が起こる前に撮られたと知り驚愕。社会に対する不満分子は決して国外の人間だけじゃないという示唆がなかなか鋭く、またグローバル企業や政府などの分かりやすい悪に振りかざす正義すら、ただの持て余した若さだと一蹴。その正義は起こるべきして起きたことと傍観者は言う。なにも変わることはないんだね。
皮肉にも彼らは資本主義・物質社会の象徴ともいえる高級デパートで宴を講じては一時の甘味に酔い知るが、舌の上に残る嫌悪感は人工甘味料のようなベタベタとした後味の悪さ。目的を失った彼らの表情に滲む罪悪感や虚しさを拭うような"My Way"や"Call Me"のシーンが印象深い。明けない夜はないと人は言うけど、長く深い夜の幕引きに空を見上げる。ただ夜風を浴びたくなった。
JunIwaoka

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