チャンミ

鳥類学者のチャンミのレビュー・感想・評価

鳥類学者(2016年製作の映画)
3.8
この監督の作品をはじめて観たけど、変容し続ける物語、自然を広く捉えるファジーなカットも、絵画のようにキマッたカットもたいへんすばらしく、楽しんだ。
あとで、お話について誰かに話した際、奥泉光の話をされたのだけど、彼も鳥類学者の名を冠した小説を書いているらしく、本作において主人公の職業をそうした意図が知りたくなった。
お話や思考に飛躍をもたらす、という意味で鳥を使いたかったのか、それとも聖書における鳩の登場が理由だったりするのか?
フクロウからの視線とそれを知覚するフェルナンドのカットなどかっこよかったのだけど、あの鳥の目線による俯瞰や、自然という人間にとり不確かへの畏怖など、さまざまな要素の受け皿としての「鳥類学者」なのかしらん。

聖アントニオをめぐって聖書を引用したお話は、キリスト教にあかるくないわたしにはわからないところもかなりあっただろうけど、砂の上に名前が書かれたときの衝撃とその後の顛末、以後スクリューボールのように転じ続けるお話はファンタジックで痛快だった。
ユーモアもあった。
ことばが通じていないはずの者同士が語り合う状況の奇妙も、まったく気にならない。

「同性愛」と日本語だとくくられそうな描写もあったけど、「愛」や「欲」といった生々しさより、もう少し観念的というか、「同性間の身体接触」くらいの普遍的な感触がして、異性愛中心主義的な今の日本においてカッコにくくらない人間関係の在り方がうかがえるかんじもよかったなー。

テング!👺
チャンミ

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