「都市」を主題に「そこでの人の営み」を取り上げた小説や映画が大好きなのだけど、これはどストライクだった。
映像をみているだけで得体の知れない強い思いがこみ上げて胸が苦しくなった。
途中からストーリーは置いてきぼりにしてただスクリーンの中にいる感覚に身を委ねていた。
エドワード・ヤン監督が映し出す"光と闇"の美しさにため息がでる。闇をベースに少しずつ光を足してあの独特の陰影がうまれているのだろうか。ベースにあるのは闇であって、必要なところにだけ光を当てて可視化している感じ。なのでほとんど闇みたいなショットも非常に多い。
脳がヒリヒリ痺れるような印象的なショットが少なくとも20個以上はあったけど、特によかったところをいくつか書き残して置きたい。
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▼FUJIFILMのネオン広告の前で肩を寄せ合うところ。
湿っぽい街、そこにだけ吹く夜風、夜の闇、煌びやかなネオン広告、都市の喧騒、二人の沈黙、止まった時間ー。
鳥肌がゾワゾワした。
デジャブみたいな錯覚をしてしまった。きっと同じようなシーンが私にも過去にあったのではないのだろうかとすら思った。
▼バイクで夜の台北市中を爆走するシーン
大勢でバイクに跨りバリバリバリバリ…と暴走族のように走り抜けるところ。なんだこのエネルギーは。なんだこの疾走感は。流れる夜の台北の景色を眺めているだけで胸が熱くなるのはなぜだろう。
▼ディスコでアジンが泣き崩れるシーン
若者たちの馬鹿騒ぎ。BGMに流れる『フットルース』の陽気なテーマ曲。かっこよく踊れなくてもいい、ただ音楽に合わせて大声で歌いながら仲間と汗をかいて踊りたんだ!!という若いエネルギーに満ちあふれている。その後ろでひとり静かに泣き崩れるアジン。このシーンも自分でも体験したことがあるような気がしてならない。
▼ダーツでの喧嘩のシーン
仕事帰りの感じで仲間と酒場で乾杯する感じや、そこで初対面の女性に挨拶したり名刺交換したりする感じも今の日本、自分の生活となんら変わらない気がした。
その後ダーツしながらムカつくこと言われてブチ切れそうになってしまう感じもまるで同じだ!笑
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ああ、エドワード・ヤン監督が生きていたら台湾だけでななく日本の都市を舞台にした映画を撮ってほしかった!台北へ行ったら聖地巡礼とかしてしまいそうだ。