ぴろぴろ

サーミの血のぴろぴろのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
3.9
1930年代 スウェーデンで、さまざまな差別や迫害を受ける先住民族・サーミ人の少女が、差別に抗いながら力強く生き抜こうとする姿を描く。
私にとって北欧は福祉とオーロラ。 白樺の森の幻想的で美しい大自然は、ティモテのシャンプーやキシリトールのCMのイメージ。 北欧での人種差別は、今作で初めて知った。
全ての人が思い描いた通りの人生を送れる訳ではないけど、生きたい様に生きる自由と権利、運命を切り拓く勇気は 人種や民族に関係無く平等に持てるものであって欲しいと考えさせられる。
眠る時も一緒だった仲良しの妹に言い放った「あんたは馬鹿なサーミ人」というセリフが悲しい。 あえて言い切った捨て台詞で、その血と伝統を受け継いで生きる人生に自ら決別して、姉妹の仲も裂けてしまった。 プライドが高く頑なにツッパって意思の強い頑固な女の子にも見えるが、体臭を気にして湖で体を洗うような一面もある。
スラっと背が高く美しいスウェーデン人の中、背が低くポッチャリした主人公が、精一杯背伸びして対等に振る舞おうと虚勢をはる姿は痛々しくもあった。
この見栄や葛藤は身に覚えがある。
全く悪びれた素振りもなく無邪気にヨイクを歌わせるシーンが、無意識に差別する側を描いて秀逸。故郷や肉親を懐かしみ、帰りたかった日もあったはず。 映画では描かれなかった、老婆になる前のエレ・マリャの人生も観てみたかった。 回想録を観た後は、頑なな老婆のエレ・マリャがいじらしい。
ヨイクの独特の旋律と、姉妹愛、エレ・マリャの芯の強そうな瞳は忘れられない。
ぴろぴろ

ぴろぴろ