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サーミの血のncccoのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
3.3
北欧スウェーデン・少数民族サーミ人の少女が差別に立ち向かいながら自由を願い宿命に抗う様を描く一代記。

全編通して透き通るような瑞々しい映像美が印象的。自然の大地ラップランドを舞台に伝統衣装に身を包んだ少女たちがトナカイと戯れる様子は一見可愛らしいけれど、そんな牧歌的なイメージとは裏腹に物語はどしんと重い。
卑劣な身体検査に、洗脳教育。古来より根付くサーミ差別という現実を植え付けられるうち、純粋な少女たちの表情が徐々にこわばっていく様子は観ていて辛かった。

ある者は運命に逆らい自分の道を開こうとし、ある者はそういうものだと自らの運命を受け入れる。宿命に立ち向かった主人公だけでなく、サーミ人としての自分を受け入れ、その人生を全うした妹もまた闘う人であったと気付かされるラストに至って、歴史が積み上げてきた罪の重さがズシンと心に刺さってきた。
対照的な姉妹を通して描かれる人生のストーリーは、サーミだけに留まらない、人間のアイデンティティというものの本質を浮き彫りにさせ提示してくれる。

湖畔を見つめながら過去に引き戻されるように感情の渦に対峙する主人公の心の動きに想いを馳せながら、サーミの歌、ヨイクの哀しい響きに浸るエンディングは感動的でした。
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