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THE BATMAN-ザ・バットマンーのピポサルのレビュー・感想・評価

4.5
復讐こそがゴッサムシティを救う手段であると信じ暴力で悪党と対立するバットマンが、受け入れ難い事実や自分とは別の救済をしようとする周囲の人物に翻弄、触発されながらバットマンとしての本当の使命を見出していくお話。

新しいバットマン像を見せてくれたマットリーヴスすげえ。青二才を感じさせる場面はいくつもあって印象に残っているのは終盤スタジアムの天井を突き破って登場するところ、ノーラン版だったらスッと無駄なく表れるけど、今回は天窓のガラスを粉々にしながら登場する。その無骨なやり方がバットマン2年目としてしっくりくるし、90年代バットマンのオマージュのように感じる。原点回帰を感じさせるものとしてはバットモービルもそうで、あの青い炎とかフォルムとかすごく好き。極め付けは厨二心をくすぐるドヤ感あふれる登場の仕方で、オイオイどれだけ溜めるんだよと思った。

これまで独りよがりな行動を取ってきたがゴードンやセリーナ、そしてアルフレッドの差し伸べる手で自分は周囲の人間に生かされていたということに気づき、暴力による悪の討伐ではなく自らの手で直接市民を助けることが適した手段だと理解する。人命救助を率先して行うバットマンの姿も新鮮だった。
また、クラブや操作現場にいるバットマンの"そこにいる"感じも良くて、特殊な能力をもったスーパーマンなんかではなく普通の人間であること、まだまだ絶対的な信頼を獲得できておらずゴッサムシティでの自分のあり方を模索している様がよくわかる。ゴッサムシティのルックも非現実的すぎず、かといって見慣れた景色でもないので見惚れてしまう。光の使い方がめちゃ綺麗。

『バットマンフォーエヴァー』ではジムキャリーが演じていてコミカルなキャラクターだったリドラーは今作でも一見同じようなサイコ野郎だが、ブルースとは手段が異なるものの同じようにゴッサムシティを救おうとしていた。大きな違いはそこに市民がいるかいないかなんだけど、市民の存在はノーラン版バットマン以降とても大きなテーマだと思う。資本家に搾取される側、存在を都合よく認識されない立場だからこそ芽生える動機はグッときた。謎を解いていく過程もいいけど、もう少しリドラーの過去や心理描写があるといいなと思った。
ペンギンは『バットマンリターンズ』だと普通の人間でありたいという純粋さがあったが、本作ではただのしたたかな悪党として描かれている。オズワルドらしさがもう少し欲しいところ。登場キャラクターが多いことで一人ひとりの内面の深掘りが浅くなるのではと懸念していたけど、やっぱりそうだった。
とはいえ、肝心のバットマンは発展途上にあるビジュアルと精神があまりにも新鮮で、自分を確立していくプロセスは存分に楽しめる。バットマンが好きとか言っておきながら元は探偵要素が強かったことを知らなかったので自分のバットマン観がアップデートできた。次回作マジでお願いします🙏




ネタバレ一言↓



















バリーコーガンのあの感じ、ジョーカーだろという意見が多いけど個人的にはトゥーフェイスであってほしい。90年代へのオマージュが多い本作で、リドラーの"お友達"といえばトゥーフェイスだろと。フォーエヴァーでのトミーリージョーンズは陽気な感じだったから...頼みます
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