パウル・レニらしい壁のきったねぇ階段を上がったり下がったりするところを執拗に描くので徒労感バリバリ。上に行っても下に行っても行き場がないから上に行ったり下に行ったりするのだが別に行ったところで何があるわけでもない。
カール・マイヤーの密室悲劇三部作の1本とのことだが、階段の上のメイドの部屋、下の郵便屋の部屋、それを繋ぐ階段全部ひっくるめてひとつの密室ということなんだろう。メイドも郵便屋もそこからどうにか抜け出したいが抜け出せない。それで、密室の外にいる男のある種奪い合いみたいになる。世界は閉じていると絶望する郵便屋。外の男に脱出の希望を託すメイド。郵便屋は下へ下へ落ちていきメイドは最後密室を抜け出てアパートの屋根に上るが、そこから飛び上がって行き着く先は下だった。
見ようによっては芥川の『蜘蛛の糸』のような物語とも言える、閉じた世界で足を引っ張り合う男女の愛憎劇。厳密に構成された見事な密室劇だなぁこれは。