テレ東の『その「おこだわり」、私にもくれよ‼』に登場したときの斎藤工の堂々たるシネフィルぶりに、ワタシは狂喜した。
レポーターの松岡茉優と伊藤紗莉にヘッドホンを装着させて視覚・聴覚の自由を完全に奪った上で、狭っ苦しい部屋の壁一面を使ったスクリーンにプロジェクターで『ピノキオ√964』を映写するという乱暴過ぎる洗礼。
音の出る食べ物は鑑賞の邪魔になるとタマゴボーロやスルメに干し芋を常備。
たまらんかった。
その後も彼の動向を追っていると、随所に映画に対する暑苦しいほどの愛情がほとばしっているのがわかった。
この作品に対する熱の入れ方、こだわりは十二分に伝わってくる。オープニングの焼き場の裏方のシーンからして画角やら音やらリズムやらが、見られることに徹底して意識したこだわりの産物であることがわかる。
ただ、作品を貫く"キモ"のようなものが感じられない。エピソードの一つ一つはよく練り込まれているものの、組み合わせると異物感があってすんなり飲み込めなかった。
このまま撮り続けてくれればきっとワタシにとっての大名作を生み出してくれるであろうという予感がするものの、現在の彼の多方面での活躍ぶりを目の当たりにすると、このどこまでも不経済で想いの伝わりにくい"映画"という媒体に、いつまで付き合ってくれるものか?という不安が付きまとう。
また次も撮ってほしい。