よねっきー

ゲット・アウトのよねっきーのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.4
最初のやや長いショットからカメラワークが完璧でワクワクする。タイトルバックもカッコいい。監督の腕が確かなことはもう『アス』と『NOPE』によって証明されているけど、それら後続の作品に比べると若干粗く感じてしまう部分もある。フィルモグラフィを追うと成長してるのが明確に分かるタイプの監督かも?

言葉でなく映像で端的に伏線を並べていくのがジョーダン・ピールのカッコいいところだ。「あの仕草はそういう意味ね」とか「だからあいつ走ってたのね」みたいな。そういう秘密が明かされていく後半は楽しいけど、若干語り口が煩雑に感じた。ミスリードがあまりミスリードになってないのが惜しいところ。

たぶん公開当時、あまり情報を入れずにこの映画を観た人は「おもしろ! ジョーダン・ピールって誰!?」と驚いたんだと思うけど、2017年よりも未来に住んでいて、かつ彼の作家性をすでに知っちゃってるおれからすると「性の奴隷」みたいな推理がいまいちミスリードとして機能してこなかった。「それは多分ミスリードってやつですよね……」と思いながら観てしまう感じ。そんなこともあり、クライマックス付近の視点が交差する編集は、結構テンポが悪く感じた。ロッドの推理パート、若干入れすぎなのかもしれない。観客の脳みそをまだ信頼しきれてない感じがする。うーん、良くも悪くもこれが初期作だ。

ジョーダン・ピールの作家性は毎作品で変化、進化しているようにおれは思う。『ゲット・アウト』のメッセージ性もエンタメ性も『アス』ではさらに洗練された。『アス』で見せつけた独自の世界観は『NOPE』でさらに強固になった。そして『ゲット・アウト』と『アス』の二作で証明されたと思っていた「伏線回収の魔術師」的な作家性を、彼は『NOPE』で大胆に裏切った。いやあ、なんてアツい映画作家なんだ。どんどん好きになっちゃうわ。また次回、世界を驚かせてね。
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