こたつむり

カーズ/クロスロードのこたつむりのレビュー・感想・評価

カーズ/クロスロード(2017年製作の映画)
4.0
『カーズ』から約11年。
いつまでも“挑戦”は終わらない。
明日につなぐ“よろこび”を描いた物語。

いやぁ。さすが、ピクサーですね。
批判を恐れずに、主人公《マックィーン》の“中途半端な状況”を描ききりました。それは望みが完全に断たれた“どん底”ではなく、天から“蜘蛛の糸”が垂れる気配を残した“挫折”。

だから、観客側にも。
中途半端な状況を強いるのです。
「夢の続きか、新たな人生か?」というキャッチコピーのように、ジリジリと《マックィーン》の懊悩が伝わり、焦燥感に悶える状況が続くので、物語がどちらに転ぶかが予測できないのです。

確かにどんな分野においても。
“常に頂点で居ること”は難しいわけで。
だから「タイミングを選べる人は幸運なのだ」とか「「クビ」とすら言われない人たちもいるのだ」とか、自身を説得し、落としどころを探すのです。切磋琢磨を続けても“時間の経過”には逆らえませんからね。

その感覚は、確実に“大人向け”。
前作で活躍した《メーター》でも、笑いが取れない雰囲気に満ちているのです。そう。本作は『カーズ』に触れた子供たちが大きくなった今だから描ける物語なのです。

まあ、そんなわけで。
大人向けの物語だからこそ。
クライマックス直前で“アレ”を予測してしまったときに…「ヤヴァイ」と思ったのです。「無防備なままでクライマックスを迎えると、涙腺崩壊間違いなし。一緒に鑑賞している息子に示しがつかないぞ」と。

だから、それを避けようと。
軽く息を吸い込んだら。
ちょうど、物語は刹那の沈黙。
僕の「ふごっ」という音が、劇場に小さく響いたのでありました…。

えー。
同じ劇場で鑑賞した方が、この文章を目にする可能性は少ないと思いますが…一応、この場をお借りしてお詫びしておきます。あの「ふごっ」は僕です。一番の見どころを邪魔してゴメンナサイ。そして、これから鑑賞に臨む皆々様方におかれましては、息を吸うタイミングに気を付けて戴きたいと思う所存。…って僕だけですか。そうですか。

最後に余談として。
奥田民生さんの新曲『エンジン』。
ギターの歪みが大音量で味わえたのは最高でした。
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