誘拐や監禁と言う点は一作目の「檻の中の女」を彷彿とさせるが、今作は被害者の対象が子供だけに、独特の緊張感が物語を占める。
伏線・捜査・動機・犯人との駆け引き、全てが奥深く水準が高いサスペンスだった。
心を折られたベテラン刑事カールと、謎の万能シリア人アサド、強烈な自己主張を放つローセの三人で構成される未解決事件専門の部署、″特捜部Q″シリーズ三作目は、今回も私の心を掴んで離さない。
ボトルメッセージからの謎の遡及という導入も素晴らしいが、それ以上に今回の犯罪のやり口のアイデアが見事。
よくある誘拐ものなのだけれど、そのターゲットにある″共通項″をもつ家族を選ぶことで犯罪の発生を誰にも知られずに済ますという、本来ならば見逃されるところだった現在進行形の事件。
その事件を追ううちに、主人公達が身の毛もよだつ真実へと辿り着いていくという、まさにハードボイルドを地で行くような、ミステリー好きにはたまらない展開にはニヤリとさせられる。
本作品鑑賞後、机に山積みになったレジュメや教科書を尻目に原作のページをこれでもかとめくった。
「ああ、今の私は特捜部Qの四人目のメンバーなんだ」とわけのわからないことを呟き、何故だか気分が高揚していることに気付く。
詰まるところ、本作とはそういう映画だ。
さて、現在映像化されている特捜部Qシリーズは全て鑑賞済みになった。
今後も映像化されるであろう本シリーズにはもはやこちらとしてはノせられる気満々なので、せいぜい金をかけて私を満足させてくれる作品を創り続けてほしいものだ。