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アウトレイジ 最終章のmayaのレビュー・感想・評価

アウトレイジ 最終章(2017年製作の映画)
4.3
1.2はお祭り感とヤクザ映画のドラマ性が贅沢に豪華に盛られていたけれど、本作はどんなに智略を尽くそうと、誰がトップになろうと、虚しい終わりの物語だった。
日本ではいばり散らすが張にはまるで無視される西野も、中田の弱々しさも、2まで怒号を張り上げていた人たちが老いてヨボヨボになりながら、同じような内部抗争を続けている様が見苦しい。2までは手に汗握る攻防だったものが、3でもまったくおなじことをやってるからうんざりする。挙句、象徴的だったのが、花菱のじいさん連中の権力掌握と昔気質の復讐のためにホールで若い衆が皆殺しにされ、幹部唯一の正当な若手の花田も殺される結末。北野武は、私たちの目に映る日本をちゃんと眼差してくれているのだと思った。証券会社出身の野村会長が罵声(「頭を使え」「使えねぇな」あたり)を周囲に撒き散らしていたことで、彼が定年までどう扱われ、どう部下を扱ってきたかがそのまま反映されてて、これはヤクザと日本の大企業を同時に描いてるのかなと感じた。
このあとヤクザは「ヤクザと家族」で描かれるように、オリンピックイヤーに向けた政策によりほとんど力を失い、昔気質の警察も同時に力を弱めていくことを知っていると、花菱の超高齢化が終わりを象徴しているように見えてしまう。

ところで、最終章で韓国が噛んできたのはめちゃくちゃアツいですね。「韓国のヤクザなんかしらねぇよ」というセリフにもあるが、高度経済成長期にジャパンアズナンバーワンに浮かれた世代には、中国や韓国との間に着実に人の流れができていることは理解できないのだろう。そんな中で日本のヤクザでトップを張ったところで無意味、ということに気づかない西田は、まさに今の株式会社の役員層だ。
済州島というチョイスが、パクフンジョンの「楽園の夜」にリフレインされてるのがエモい。そうか、ここから来てたんだね。
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