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散歩する侵略者のpikaのネタバレレビュー・内容・結末

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

黒沢清にズブズブハマってきて今作で完全に惚れた。ちょこちょこ見てきた黒沢清の好きだと思った部分が凝縮した映画だった。大満足。胸がいっぱいです。
オープニングがめちゃくちゃ良い!「ダークナイトかよ」みたいなタイトルバックがめちゃカッコいい。
音楽とSEで印象ってここまで変わるんだなという感じで画面の印象を操作するゆるい音楽の不可思議さがドラマのSF感と完璧に融合している。宇宙人侵略なんて一昔前のB級怪奇ホラーのような題材を現代のクリアな画質でやっちゃっているのに全く違和感がない。音楽の奇妙さと、日本でありながら日本感が薄い虚構の街のような無国籍感がフィクショナルなドラマに説得力を与えている。
フィクショナルでリアル、現実性と虚構性、ギャグとシリアス、侵略と愛情、宇宙人側か人類側かなど、対象的なものの境い目をギリギリ綱渡りするような感覚が常にあって、どちらにも振り切らずちょうど中間を彷徨うような演出が映画の言わんとする「共存」を可視化しているようで面白い。テーマをドラマではなく演出で表現するってのが作家性なのだろうか、そこらへん興味深い。もっと見て考えたい。

映画で言えばある意味古典的な題材を現代風にアップデートしたとは言えない変化球な話で描いているのにベタとも言える「愛は地球を救う」という直球ど真ん中なところにオチをつけるところが泣ける。友情は互いに芽生えていくものであるのに対して男女の愛は友情以上に親密になり得るがゆえに互いに同等ではなく常にどちらが一方的に深いという差別化が面白い。ストレートに終わっていたらここまでの余韻はないだろう。映画のバランス的には蛇足とも捉えられかねないエンディングが映画の肝と言わんばかりにズシリとくる。黒沢清は他作でも最後に「よく見るとわかる」くらいの素っ気なさでヘビーなことを伝えていることがあるけど、そういうきめ細やかなところが商業映画で作家性を維持できる所以なのかな。ここらへんも今後また考えよう。

知識ではなく異物同士である知的生命体が相手の土俵に立って理解するために概念を奪う、認知するという仕組みが面白い。感情や人格などそのもの自体を奪ったわけではなく、赤ん坊のように未知の状態から取り戻すことができる。概念の大きさによって影響の度合いが変化している。概念とは何か、どうやって認識しているのかというのを改めて考えると共にそれがどのように他者との繋がりに影響しているのかと問われているような。楽しい。

役者が全員めちゃくちゃいい。一人ひとりが上手いのか黒沢清が上手いのかわからないけど全員素晴らしい。宇宙人たちの繊細な変化が最高。長澤まさみがめちゃくちゃ良い。邦画あまり見てなかったけどこんなにいい役者陣がいるのかと知ると色々見たくなってくる。
概念を奪う瞬間や宇宙人の不気味さを表現する、決して現実感があるとは言えないライティングがめちゃくちゃ良い。あーいうのが見れるってのが映画とかの作られた世界を見る醍醐味だと思う。楽しい。

中途半端にメモ書きみたいなレビューになったけど見終わって全くまとまらないのでまずはこんな感じで。
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