TAK44マグナム

エンド・オブ・ステイツのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

エンド・オブ・ステイツ(2019年製作の映画)
3.6
守護天使は猛獣!


名前からして闘う役が似合いそうな俳優ランキングでベスト3には入りそうなジェラルド・バトラーが、合衆国大統領を護る超人的なSPであるマイク・バニングを演じるシリーズ第三作(因みに、監督・脚本のリック・ローマン・ウォーも戦争映画を撮るために生まれてきたような名前。スペルは全然違うけれど)。

大統領になったら命は無いと思った方がよいほどデンジャラスな世界観は、現実よりも更に殺伐としております。
原題は、「守護天使」であるバニングが大統領暗殺未遂事件の首謀者として指名手配されることからきていているのだと思いますが、大統領が狙われるにしても邦題だと合衆国が終了してしまいかねないので少し盛り過ぎじゃないですかね。
それにこうなってくると、なんでも「沈黙」がつくセガール作品みたいに、ジェラルド・バトラーが出ていると全て「エンド・オブ〜」ってつくようにかるかもしれませんよ!
「エンド・オブ・バトルシップ」とか、「エンド・オブ・エクスプレス」とか、「エンド・オブ・フォートレス」とか、「エンド・オブ」・・・・・
もう、いいか!


大統領が元副大統領であったトランブル(モーガン・フリーマン)に変わっても、マイク・バニングは相変わらずSPの任務についていた。
自らの進退に迷う中、大量のドローンによって大統領が狙われる事件が発生。
大統領は意識不明、マイクも傷を負ってしまう。
やがて目覚めたマイクであったが腕には手錠がはめられていた。
唯一の生き残りであるマイクには事件の犯人として疑いがかけられており、しかも動かぬ証拠が見つかったという。
その証拠を元に、ロシア政府が黒幕だとした副大統領はロシアに対して報復措置をするべきだと主張する。
そして、護送中のマイクを謎の戦闘部隊が襲撃、マイクは反撃し敵を殲滅した。
敵の顔を見知っていたことからマイクは自分を嵌めた相手が誰なのか知る。
逃亡犯となったマイクだったが、「必ず犯人を見つけだす」と宣言するのであった。


今回のマイクは初めっから満身創痍。
頚椎損傷のダメージが蓄積されていて、不眠症だわ慢性的に頭痛がするわ、仕事にも影響がでるほどです。
でも、そりゃ今までの無茶を思いかえせば当然でしょう(汗)
「エンド・オブ・ホワイトハウス」では、たった一人でホワイトハウスを占拠したテロリストを一網打尽にして、「エンド・オブ・キングダム」では、世界各国の首脳を暗殺するような相手からたった一人で大統領を守りきり、テロリストを全滅させていましたからね。身体が悲鳴をあげるなんて当たり前!
でも、これがいざ戦闘となると全然平気で敵を瞬殺してゆくのだからどうかしてます!
だったら身体の調子が悪い設定なんて要らないじゃないの!
でも、まぁ、いつもよりやや弱気になっているのは間違いなく、マイクはある人を頼ることになるのですが・・・

かなり雑な設定も散見されるし、何よりもお話自体が薄っぺらい。
敵や黒幕の正体なんて最初からバレバレですし、そもそもマイクを犯人に仕立て上げる意味があまりありません。
マイクが超有能なのはそこら辺の子供でも知っているぐらいなのに、そんな激強い男を嵌めるのはリスクが大きいでしょう。
殺せる時に殺っておかないといけない相手ナンバーワンじゃないですか。
マイクを選ぶ理由として考えられるのは、ひとつは自宅に証拠を仕込むのが比較的容易だからという事、そして、マイクを「殺害」まではしたくなかったという気持ちの表れかもしれませんが、そこら辺もうまく描けていたかいうとそうでもないんですよね。
なので、前半の逃亡ではあまり気分がアガりませんでした。
暗くてアクションが何をやっているのか分かり辛かったというのもありますけれど。
結果的に、獣性を取り戻したマイクと戦うことが叶って良かったのでしょうが、そんなの知ったことじゃないですよ。
それよりもっと、犯人役がマイクじゃないとならない確固たる理由が欲しかったです。
それ以前にFPSゲームのキャンペーンモードみたいなシナリオが、せっかくの終盤の緊張感や、大統領との深い絆がわかるお涙頂戴シーンなどの見どころも多いのに拘らず、明日には観たのを忘れていてもおかしくないぐらいペラペラなのが惜しい。
また、前作と比べて明らかにこじんまりとした物語もスケールダウンが感じられて寂しかったです。
何も無理してスケールを大きくすれば良いってわけではありませんがね。


しかし、中盤になってマイクパパが登場すると俄然、面白味が増しましたよ!
そこからは尻上がりに楽しくなり、痛快さを味わえました。
ニック・ノルティの、積み重なった人生を感じさせる髭のモジャモジャ具合が良い!
どこかお茶目なところもあって、ド派手に爆弾を爆発させまくったかと思うと渋い活躍も魅せてくれるという、まさにスーパーな爺ちゃんで非常に頼もしい!
一家にひとり欲しいお爺ちゃんですね!

一連の爆破シーンはどれも迫力がありました。
本当に爆発させて、吹っ飛ぶ人間とかはCGで足しているのかな?
森に仕掛けた爆弾で敵部隊を殲滅してゆくお爺ちゃんは鬼畜で最高!

クライマックスの病院での戦闘も出来栄えが素晴らしく、毎度のお約束であるマイクの無双ぶりを堪能できます。
敵も味方もちゃんとプロっぽくて、それっぽく演出された動きも良い感じ。
最後の対決も派手さは抑えめにして、「戦いの中に生きる男の性」を哀しく映しだしていました。
渇いた雰囲気がよく出ていましたね。

イラクで起きた、民間軍事会社の兵が民間人を誤射してしまって惨事となった「ブラックウォーター事件」が本作のシナリオの土台にあるかと思いますが、戦うことでしか生きられない男たちの生き様と共に、民間軍事会社を重用せざるおえない現実の問題点などにもっと深く切り込んだエンターテイメントになっていれば全体のクオリティも底上げされたかもしれません。
三作目にして、マイクという人間に焦点を当てた作りは正解でしょうけれど、娯楽に振るのかそうでないのか、全体として今一歩ブレがあるように感じてしまいました。

かように、良いところも悪いところも共存している本作ですが、こういう系統がお好きなら観ても損はしないでしょう。
個人的には、傑作無双映画だと支持する前作にはおよばずで残念。
また、奥さん役がラダ・ミッチェルじゃなくなってしまったのもそうですし、ウィル・スミスの奥さんがハンパな活躍のみで終わってしまったのも残念でした。
ラダ・ミッチェル好きなのになぁ〜。
ジェイダ・ピンケット・スミスも、もっと深めに絡んで欲しかったです。
あれだと、ただのいけ好かないバカな人でしかありません。
そういう役柄なのかもしれませんけれど。

それにしても、マイクの幼い娘ちゃんが超絶キュートでした。
あの子役こそ天使。


劇場(シネプレックス平塚)にて