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メアリと魔女の花のスティーブのレビュー・感想・評価

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)
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『アリエッティ』『マーニー』の米林監督、独立第一作。宮崎イズムを受け継ぎながらも、やはりこの監督には確実に宮崎氏のそれとは違う個性があるなと感じた。

上記二作しかり、米林作品はどれも、宮崎作品より圧倒的に「小さな世界」を描いている。その傾向は本作でも健在で、「空に浮かぶ島」「そこにある魔法大学」と、その気になれば「異なった社会や文化」「そこでの人々の暮らし」といくらでもスケールの大きな物語が描けそうな設定なのに、米林氏はそうしない(おそらく宮崎氏ならそうしたと思う。『ラピュタ』『千尋』などでそうしたように)。むしろ登場人物も限りなく少なく、一種箱庭的な世界観すら漂っている。とはいえ、それは別に欠点というわけではなくて、恐らく米林氏は「小さな世界」での「小さな成長」にこそ強い作家的興味を持っているのだと思う。だからこそメアリも、「魔法なんて要らない」(=魔法なんてなくても、自分は変われる)という結論にたどり着くのではないだろうか。

あと米林氏のもう一つの個性として、視聴者を油断させておいて(というか、こちらが構えてないだけなんだけど)、作中にきちんと伏線を張った上で、意外な真相を入れ込んでくる点が挙げられると思う(『マーニー』でもそうだったけれど、本作でもOPのあれこれが、実はあの人の意外な正体に繋がっていたり)。……なので米林監督にはぜひ、その「箱庭的世界感」「フェアに意外な真相を提示する」という個性を生かして、少女が閉ざされた館で謎を解くミステリーとかやってみてほしいと思っているんだけど、どうだろう。すごくおもしろくなると思うんだけどなー。