ガンビー教授

マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディションのガンビー教授のレビュー・感想・評価

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改めて、すごい映画。もう説明不要。あえて点は付けないが、満点のようなものだと思ってほしい。映画というのは、ほぼ現象(事物のふるまい、運動)を紡いでいくだけでフィクションを語ることができるまれな表現だと思うが、ほぼ2時間ノンストップで語られるこの傑作はそういう基本的な原理原則を想起させる。

前に誰かが言っていたことではあるけど「駅馬車」感というより「いつの時代の映画なんだ」感のほうが強い。音楽の使い方、空撮の挿入、砂嵐のような映像効果、銃が耳元で発射されて耳鳴りが響くような演出……といった様々な要素によって時代不明感が強まっている。

主要登場人物たち(マックス、フュリオサ、そしてイモータンジョー)の冷たい目つきが印象的。彼らは目にありありと感情を表すのではなく、ふだんはクールな感じでここぞと言うときに種々のニュアンスが込められる感じ。それが語りすぎない(視覚に訴えかけすぎない)白黒の画面によって際立っていた。

目つきと言えば、気付いたこと。この映画では要所にフュリオサとマックスが目を合わせるくだりが何箇所か配置されているが、その一番最初はここだったのだな、と初めて気付いた。なにぶん情報量の洪水のような映画だから、何度見てもこういう気付きは絶えない。

(追記)監督本人が認めているとおり、部分的には白黒になったことで分かりにくくなった箇所もある。しかしそれでもこの白黒バージョンこそが監督が最も気に入っているバージョンだそうだ。繊細かつ大胆、寡黙かつ雄弁、野蛮かつ神聖なこのおそろしく考え抜かれたバカ映画において、白黒という変化が加わったことで一種の、控えめな激烈さとしか言いようのない矛盾した形容詞が新たに備わったように思う。白黒で捉えられた砂漠はまさに死の世界に近い。そんな死んだ世界で魂が生き生きと躍動する。カラーバージョンとモノクロバージョンはとりあえずどちらにも別個の良さがあるので、2つとも見ておく価値はある。
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