みきちゃ

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのみきちゃのレビュー・感想・評価

4.6
なんか元気出た!トーニャもトーニャ母も超絶タフネスで、元気もらった。社会派の方向に持っていくわけじゃなく、ユーモアだらけで、誰のことも裁かないし、美化しすぎてもないし、そのせいでたまにかなり胸が痛いんだけど、それでも観てて気持ちよかった。なによりこんなフィギュアスケート映像はみたことがない。実際の競技中にこんな風に撮影はできないもんなあ。ダイナミックなスケートシーンだったー♪

トーニャはトーニャなりにただ一生懸命生きてだけで、そしたらある日突然全米が自分について論じていて、狭い世界にいた彼女は状況をうまく把握することも出来ずに、とにかく困惑してたんだろうなぁ。「あたしは人生ずっと何千回となく叩かれてきたのに、なぜナンシーは一回叩かれただけで大騒ぎになるの?」みたいな台詞があってハッとした。あなたの常識=わたしの非常識。

大学の政治倫理の講義でのディベートの議題が「格差社会」で、ナンシー・ケリガン襲撃事件のことを言い出した子がいて、盛り上がった結果レポートまで書かされた。格差社会と事件がどう繋がるかというと、トーニャは下流階級のいわゆるホワイトトラッシュで、そのスケート力でアメリカンドリームを掴んで成り上がってもおかしくなかった。母親にスケート以外の全てを奪われ、学歴もない、友達もいない。何にもない。ただスケートと旦那しかなかったトーニャ。対するナンシーは、これまた実はホワイトトラッシュで、境遇的によく似ていた二人だったからこそ富裕層だらけのアイススケート界で友達になったんだと思う。ディベートに話を戻すと、印象的な意見の1つに「下流階級を嫌ってるのは真面目に働きルールを重んじる中流階級で、下流階級からの成り上がり者をみつけると、どの層よりもやっかんで認めない。最も人数の多い中流階級が大衆意見=世論になりがちで、下流階級を生きにくくしている」というのがあって、その一例がトーニャ。当時の映像をクラスのみんなでみてからまたすこし討論をした。圧倒的にマスコミ受けが良かったのは細くて可愛らしくてしなやかに舞うナンシーで、筋肉質で太くて下品で礼儀が悪くて自分を可愛く見せる気がないトーニャは愛されなかった。言葉使いはかなり悪く、いなかっぺ丸出しで、育ちが良くないこと大全開。今なら破天荒さで人気が出たかもしれないけど、当時大衆受けすることは難しかっただろう。このタイプの白人とか誰も好んで見たがらないしね。無邪気で決して嫌な感じはしないんだけどなあ。でも大衆がフィギュアスケートに見たかったものを、ナンシーは持っていて、トーニャは持っていなかった。

プロデューサー兼主演のマーゴット・ロビーかっこいい!母役のアリソン・ジャネイもすごかった。この母親っぷりは、目覚めていながらに見る悪夢。ショーン役の人もご本人登場級のものまね力でやばかった。

映画をみたからって「トーニャほんとはいいやつ!がんばれ!」とは思わない。上から目線の批判など一切感じられなかったこの映画が唯一釘を差してることがあるとすれば、きっとそれは「そんな大衆の安易さ」だ。
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