Smoky

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのSmokyのレビュー・感想・評価

4.1
チープなモノで溢れた汚い部屋、主食はジャンクフードで、ひっきりなしに煙草を吸い、酒を浴びて男は女を殴り、親は子供を殴る。暴力によるコミュニケーションや、毒親との関係によって歪な人格が形成され、教育の価値は低く見積もられるので文化資本も蓄積されない。
米国人口の約半分を占める貧困層の中でも、こうしたホワイトトラッシュと呼ばれる人たち(トランプに投票するような人たち)が起こしたのは、コーエン兄弟の映画みたいな、お粗末で間抜けで悪い冗談のような事件(当然、秒速でFBIと警察の捜査網に引っかかる)。

象徴的なのが、主人公が劇中で何度も口にする「私のせいじゃない」という言葉。他人や社会のせいにすることで、行為の主体性は失われ、誰も責任を負わず、起こったアホみたいな顛末を面白おかしく消費するだけ。物語の終盤、殴打事件も消費され尽くされ、TVのニュースがO・J・シンプソン事件一色に染まるシーンが印象的。

プロデュースと主演をしたマーゴット・ロビーの渾身の演技。彼女自身「単なる金髪美人として消費されたくない」という意志表示をしているかのよう。
それよりも光ったのが、海外TVドラマ『ホワイトハウス』の頃から大好きだったアリソン・ジャネイの毒親っぷり。確かにアカデミー賞受賞に値する納得の怪演。

見事なカメラワークと編集によるスケート・シーンの臨場感と美しさは圧巻!
Smoky

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