わたP

犬ヶ島のわたPのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.5
おれこれウェスアンダーソンのなかでだいぶ好きな方かも。
ファンタスティックMr.FOXのときも思ったんですけど、パペットアニメの方がウェス・アンダーソンの良いとこがより出るんじゃないかなと思ってて、簡単に世界観がとか言いますけど、パペットアニメの方が完全に一から作るわけで、その画面の統率とか色彩感覚とかをよりはっきり描きやすいんじゃないかなと思うんですよ。
だってもう最初のフォントの感じとかでこれ面白いなってわかりますよね。

ストーリーはごくごく単純なんですけど、各キャラやセリフまわし、ちょっと出てくる小道具なんかが凄い楽しくて、それでいて毒も効いてるんですよね。
未来の設定なんですけど、どこかレトロ感があって、どうやら黒澤明の時代に未来を想像して作った映画のイメージだそうで、ややこしいわ。
でも僕は街の広告の感じとか、ちょっとファンキーなとことか、なんとなく松本大洋に似てるなあって思ったんですよね、で、インタビューとかパンフレットとか色々読んでも松本大洋に全然言及してなくて、嘘やんってなりましたね。

あ、そうそう、この映画の何がいいかって日本語の感覚が凄くいいです。小林アタリとかメガ崎とか絶妙に変な名前かと思いきや、壁の落書きとか、新聞の文章とかはしっかりしてるんですよ。この辺の日本文化のチェックは小林市長の声をやってる野村訓市さんという方が一任されてたそうで、なにやらこの人クリエイティブディレクターとか言ってすげえしゃらくさいなあと思ったんですけど、ちゃんとしてはるんですね。そもそもウェス・アンダーソンと友達って時点でちゃんとしてるか。

あとそれからキャストが何分豪華なもので、あ、ビルマーレイだ、とか、あ、スカヨハだ、とかブライアンクランストンだとかって、誰の声かを当てるのも面白いですよね。セリフのとこで感心したのは、終盤に手術のシーンがあるんですよね、で、渡辺謙が医者なんですけど、その手術のシーンがものすごいリアルな(実際見たことないからどうかわからんけど)よくある映画やドラマの緊迫した手術のシーンじゃなくて、「はーい、切るよ、はーい。〇〇ちょうだい、いきまーす」みたいなボソボソしたセリフで、なんでそんなとこめちゃくちゃリアルにやってんの!?って思いましたね。
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