nana

バッカス・レディのnanaのレビュー・感想・評価

バッカス・レディ(2016年製作の映画)
3.5

現実の闇

高齢化と生涯未婚率の高まり。


死ぬほど上手

売れっ子だった売春婦のソヨン。
客もソヨンも歳を取り、高齢者向けのコールガールに。

客に病気をうつされ、薬局で鉢合わせた同業者にそれを言いふらされて、商売アガったり。

そんな日々の中でフィリピン人の子供を預かり、一緒に生活をする。
この子の面倒を見る事でソヨンも癒やされて行く。

この件に、女性が異国で生きていく、また違った困難のドラマが織り込まれている。

素敵な紳士。
昔からの上客の仕事が入った事から、思いもかけぬ事態に巻き込まれるソヨン。
性処理よりも重すぎる「仕事」
この人の人生を大きく変える事に。


収入は安定してないし、家族もない。
どこか似たような住人たちが集まるアパートが、彼女のホーム。
寄り添いあっている。

移民や貧困、高齢化〜の寂しさ。
韓国社会の闇が上手く描かれている。

性欲だけで呼ばれるのだけでは無いバッカスレディ。
それを通り過ぎた人達の孤独にも寄り添う。


一人で「あの世」に旅立つ事への恐怖と寂しさ。

最後を誰と迎えるか
人間はそんなに強くないよと、この作品は教えているようだった。

ラストのソヨンのセリフが何とも言えない。
その生活を敢えて望むほど、彼女も追い詰められていたなんて。
諦めよりも選択。



この作品を鑑賞した後に、ニュース番組でバッカスおばさんを特集していた。
孤独から逃れたい
そんな老人が公園に集まり、互いに会話をする訳でもない。
時折、人肌の温もりと優しさを求める。
現実に。
nana

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