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私たちはどこに行くの?のEyesworthのレビュー・感想・評価

私たちはどこに行くの?(2011年製作の映画)
4.7
【黒衣の女たち】

レバノン出身のナディーン・ラバキー監督による2011年の映画。

〈あらすじ〉
1990年代初頭、レバノンの小さな村。イスラム教徒とキリスト教徒が道を挟んで共に暮らしている。女たちは戦争が終わったことを喜び安堵していたが、男たちは宗教の違いを理由に何かと諍いを起こしてばかり。そこで、愛する家族をこれ以上傷つけまいと、女たちは宗教を超えて団結。テレビを壊してみたり、ストリッパーを村に呼んでみたりとあの手この手で男たちの目を争いから逸らそうと画策する。しかし、とある事件が起き…。

〈所感〉
レバノン映画は初めて見た。日本では殆ど見られていないようで意外。もっと多くの人が見るべき作品だと思うのでスコア上げときます。宗教間の対立というのは我が国以外のどこでも見られる何の変哲もない事象なのだろうが、閉鎖的な小さな村でこういった争いを顕著に描いている作品は初めて見た。この村の女性は信じている対象や教えが異なろうと、皆困った時はお互い様!と協力して生活をしている。なのでとても連帯感が強い。一方でこの村の男性は何かにつけて争いの種を探しており、好戦的な人間関係となっている。ややもすると、戦争を起こすのはいつも愚かな男で、女はその犠牲者だ、という主旋律が聞こえてきそうだ。しかし、異国のストリッパーの女性たちをを村に招待したことをきっかけに少しずつ親睦は深まっていく。それでもやはり事態は最初と少しも変わらない。ファンタジックな世界観のリアリスティックな寓話が我々の心に影を落とす。人間のどうしようもない欠落を知る意味で、とても良い作品だった。微妙にミュージカル風を取り入れているところが面白い。
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