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三度目の殺人のSY3KRのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.0
国内外で高い評価を獲得し続ける是枝裕和監督の手がけるサスペンスで、2018年の日本アカデミー賞では10冠を獲得する快挙を成し遂げた。

本作はとにかく目配せしたくなるような演出の連続だ。物語が雲を掴むように判然としないからこそ、目に映る1つ1つのシーンの意味を読み解きたくなる。各々の描写が単なる「気持ち悪さ」ではなく、何度も繰り返し鑑賞したくなる「味わい深さ」に昇華されているのが見事だ。

特に面白いのは、犯罪者と弁護士という全く正反対の立場にある2人が、本質的には似通った人物として描かれている点だ。三隅と重盛は、家庭環境や嗜好・信念に至るまで共通点が多い。面会のシーンは露骨なほどで、対面窓を挟んで座る2人は完全に鏡写しとなる。その距離は回を重ねるごとに縮まっていき、終盤ではついに同化してしまう。

重盛が三隅と多くの共通点を持つあまり、彼に影響を受けすぎてしまったのか。それとも三隅が重盛の欲求を感じ取り、模倣したのか。この2人の関係性の描き方は非常に興味深く、鑑賞後も消えない余韻を残す。

役所広司は、ある時はどこにでもいそうな中年男性、ある時は異常性を感じる殺人犯と、二面性を持つ複雑なキャラクターを巧みに演じ分けた。これまで漫画の登場人物のようなデフォルメされたキャラばかり演じてきた福山雅治も、本作では翻弄・困惑させられる重盛を熱演。両者とも素晴らしいパフォーマンスを披露している。

優れた脚本・演出・演者のパフォーマンス・社会性を含んだテーマ、全てが上手いバランスで並立しており、是枝監督の実力をまたしても思い知らされる一作だった。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:87%
・観客支持率 :69%
「本作は監督・脚本を手がけた是枝裕和の渾身の一作と呼ぶには値しないが、その重厚なテーマに見合った満足のいく内容に仕上がっている。」
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