青いむーみん

三度目の殺人の青いむーみんのネタバレレビュー・内容・結末

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

 「あなたは器?・・・」これが全て。私の話す真実なんて誰も興味はない。みんな勝手に思うように思うだろう。ならば私は器になってあなたの思うことを受け入れましょう。だからタイトルは「三度目の殺人」それは自分自身を殺すということ。三隅は自分を殺して、純粋な真実と誰かが信じたい真実のダブルスタンダードがまかり通るこの社会に対してのアンチテーゼとしての存在になった。しかしそれは自殺か?それとも誰かが殺したと言うのが適切なのだろうか?

 で、工場長を殺したのは誰なんだ?観終わってそう思うのは当然。誰が彼にそうさせたのかということが一番のテーマだから。是枝さん攻めてんなぁと思ったけど、その分最後のセリフなどちゃんと分かるように配慮してる。あのセリフはなしでも成立はしてるし、そもそも三隅はずっと答えを言っているし、川島と摂津の対比もある。ちゃんと主人公が答えに辿り着いて答えを言うので親切な作りになっていて完璧。これはただの司法批判じゃないし、もっと普遍的なもの。誰にでも思い当たるところはあるだろう。

 テーマとリンクしていて素晴らしい出来の頬を返り血で汚した三人の映るポスター。ある意味これはネタバレポスターですね。デザイン的にはあんまりパッとしないなと思ってたけど意味がわかると唸らされる。映画内でも最後の接見室での重盛と三隅の重ねる表現なんか、やっぱ是枝さん凄いなぁと唸ったし、テーマを表現する方法がホント素晴らしいわ。ラストシーンの十字路まで意味があって見応えありまくりの唸りまくり映画だった。

 三隅は重盛と話す際は重盛の望む三隅を、咲江との時間は望まれるがままの優しい父親像を自分という器に入れて表現していたのだろう。こんな役者冥利に尽きる役というか、実力者じゃないと出来ない難しい役でもやっぱり乗りこなす役所広司は凄まじい。広瀬すずは可愛さが邪魔だった気が。あのルックスでいじめられっ子の陰キャラは説得力ないんじゃないか?そもそも咲江が可愛い必然性がないし。斉藤由貴が憑依してるレベルだったからそれに負けない上手さのある人でないといけないから人選は難しいんだろうけど。バッファロー吾郎Aさんはほんの一瞬じゃなかったか?多分見たと思う。多分・・・

 作家森博嗣が作中で何度も書いてる「動機なんてどうでもいい。誰にも分からない。本人にすらわからないかもしれない」(意訳)
これが正にこの映画を言い当てている。動機はコレですって言ったとしても、誰もが自分の思いたいように思うのだから。