Hondaカット

三度目の殺人のHondaカットのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.1
82点。是枝監督の確かな演出力で描かれる濃厚な法廷ドラマ。人物の想いや思惑を追っているのに、それを直接はっきりと見せず、展開と、陰影のある画づくり、表情の芝居で語り続ける。なんという映画的情感に溢れる作品か。

3組の「親と子」の関係性が、じわじわと染みていくような脚本。少しずつそれらが滲んで一体化していくさまに鳥肌が立つ。役所広司の化け物クラスの演技力で、あれだけ感情豊かな芝居をしているのに内面がほとんど見えないというのが恐ろしい。そんな理解できない相手と、実はメンタリティが変わらないのかも…と思わせるセリフ回しやカットの切り取り方は監督の狙い通りだろう。

この「信じる・信じない・殺しという行為・真実の多面性」という種の話を【宗教】に全く絡ませずに描ききるのは邦画でしか到達できないかもしれない。この映画自体が大きく宗教じみてくる…ほど。(だけど救いの部分を描かない!)

司法のシステムの薄気味わるさと、人が人を裁くある種不可思議な状況を、ウェットにならないサクサクとした編集で進んでいく。空っぽの人間の正義、というのが、ある種、空っぽともとれる裁判制度ともリンクしていく空気感。映像で語るメディアである映画だからこそ提示できる問題提起の仕方。見応えたっぷりでした。

(※ ネタバレ込みの考察をコメント欄に追記)
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