万引き家族を見に行ったという話になるたびに、元々「是枝さんが好きで〜」なんつってパルムドールで注目されてるからじゃないですよアピールをしてきた僕ですが、実は一個前のこれを見ていなくて、なんか知らないけどこのタイミングで見た。っていうだけ。でもちょうど麻原彰晃が死刑になった翌日だったので、なんかタイミングいいのかもな。なんて勝手に思ってしまった。死刑制度に対して別に思い入れも主張もないくせに。
ストーリーとしては、人情のかけらもない勝利主義の弁護士が、強盗殺人罪を自白した男を弁護していくにしたがって、モノの見え方がどんどんと変わっていくというお話なんだけど、この容疑者の男の役所広司がほんっっとにすごい。いや、つーか役所広司って元々めちゃくちゃすごいけど改めてすごいと思った。まず最初の面会のシーン。愛想も良くて飄々と受け答えはするんだけど、どこか人間としてなにか欠落してるんじゃないかと思わせる演技。マジで恐ろしかった。でその後福山と二人きりで面会するシーンがあるんだけど、そこでは前回とは違ってどこか見透かされているような、深淵のようなものを感じて、これもまためちゃくちゃ恐ろしい。で、この面会シーンがすごい印象的で、ガラス越しの面会室だから、相手の顔がガラスに映るっていうのを利用してるんですよね。つまり、役所広司のワンショットなんだけど、そこにはガラスに映った福山が写り込んで隣にいるように見える。っていうのを毎度使うわけですよ。でこれが重なったり離れたりするんですけど、最後の最後の面会のシーンだけ、横向きでしかもどっちがガラスに映ったほうなのかわからなくなってくるんですよ。これって限りなく怪しいけど自白しか証拠がない容疑者か、どうにでも操って事実を作り上げられる司法なのか、いったい誰がほんとの殺人者なのかって言ってるってことなんだろうと思うんですよね。
そしてこの映画は結局劇中の広瀬すずちゃんや満島真之介や市川実日子のような、強い意志とか理念とかそういうものさえ、大きなうねりの中には逆らえない現実を描いてて、相当残酷な結末になるんですけど、システムとか利権とか空気を読むとかそういうことのせいで真実が見えなくなってるんじゃないかと感じます。
この映画キャストがほんとに抜群で（是枝さんはいつもそうか）そして父になるに続いて福山はいけ好かないし、広瀬すずちゃんは海街diaryとは違って影のある、なんか持ってそうなキャラが良かったし、あと嬉しかったのは「どこで狂ったんやろ、私の人生」のおばちゃん（海よりもまだ深くより）が出てきてて、「いや焼肉食うてるやん！」っていうちょっと笑えるポイントを残してくれましたね。
