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サマーフィーリングのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
3.7
突然、恋人サシャが亡くなった。
死を受け入れられないローレンスとサシャの家族。遺された人たちのその後の3年間を静かに見守った作品。

ローレンスは妹ゾエにサシャの面影を見つけ、ゾエはそんなローレンスの視線を意識する。

翻訳家のローレンスは知的で穏やか。ゾエは妹っぽいスイートな雰囲気で、お似合いだと思っていた。でも物静かなローレンスは姉御的なさばさばしたひとがタイプ。

結局、恋人を失った男は、新しい恋で癒されるが、家族を失った者は、消えることのない寂しさを抱えていく。

ローレンスはベルリンからパリ、ニューヨークへと街を変える。
ゾエもまたパリからテキサスへと。

「ユリイカ」「ドライブ・マイ・カー」でもそうだったが、喪失を抱えた人が癒やされるには、物理的に居場所を変えることなのだろう。それができない場合、サシャの両親は部屋の模様替え、リフォームをしていた。

私は多くの死に会った。
友人も家族も。
死者と生者の境を区別することが難しい。
暮らしていたままを残し、死者と共に生きている。今まで通りいつもそこにいる。
死、死者との向き合い方は人それぞれだが、西欧と東洋では違うように思えた。

いくつもの街の日常を撮していて、その街ごとにリズムが違う。私はベルリンを身近に感じた。東京の山手線外側の緑も住宅地も商業地もごっちゃにある人間サイズの街のよう。ローレンスがベルリンからパリ、ニューヨークへと移り住むにつれ、歩くスピードが速くなり、姿勢も変わる。

友人たちのパーティーも街ごとに違う。音楽も、招待される人も会話も。ニューヨークのペントハウスでのパーティーは夜景がよく、大都市の匿名性らしく、お行儀はわるいが自由だった。でも、こじんまりしたベルリンのパーティーが好き。

主演のアンデルシュ・ダニエルセン・リーの穏やかな雰囲気と抑えた知的な表情がグリーフケアをテーマにした本作に合っていた。翻訳家の役だったが、ドイツ語、フランス語、英語を駆使していて、すごい!と思ったら、ノルウェー出身の俳優兼医師だった。確かに表情は医師の笑顔であった。
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