ちこちゃん

彼女とTGVのちこちゃんのレビュー・感想・評価

彼女とTGV(2016年製作の映画)
4.0
「人生はいつも目の前にある」

人は、年齢を重ねるとルーチンから抜け出すことが難しくなります。なぜなら、自分の決まりごとを変えてしまうと、失うことがおこり、それが怖いからです

ジェーン•バーキン演ずるこの映画の主人公もそうです。でも、そのルーチンを変えない中で、日常を変える出来事がおこります。そんな出来事に心躍らせ、それが人生を彩ることに変わっていく、そして少しビターな想いをすることになります。

でも、文通相手にパートナーがいたことを知るというビターな思いをしても、変化があるから、新しいことが始まります。この映画でも、変化があったから、新しくパン屋をやり直す、新しい若者を雇用することにつながることが描かれます
そして、文通からメールへ挑戦する、アナログを手放し、デジタルを手に入れることの変化も描かれます。

TGVに限らず、乗り物は人生を変えるトリガーとなるものである、ということを実話であるとはいえ、うまく題材として使っている映画です。そして、スイスの風景、素晴らしい風景が展開されます。
そして、ジェーン•バーキン、年齢を重ねても素敵ない笑顔でいられる、もちろん女優さんだからではありますが、年齢を重ねることが女性の価値を下げることにはならない、という社会の価値観に支えられているからではないかとも思います
日本では、イケオジとはいいますが、イケオバという言葉は聞いたことがありません。えてして年齢に関してセンシティブであるアジアでは、特に女性においては、若いことに価値があるという価値観が前提としてあり、それが違いを生んでいるのかともおもいました。もちろん、この映画でも、恋する母親に、いい年なんだから、そんなことより老人ホームに入ることを考えたら、と母を諌める息子のセリフがあったのですが。

30分のショートムービーでありながら、ほろっとできる良作です。

何かを手に入れるためには、何かを手放さなければならないのですが、年齢を重ねるほど難しくなる、ということを思いながら、挑戦しつづける人でありたい、と映画を観ながら思った次第です。

この映画、実話であり、最後にご本人が映っていました。
良き映画をご紹介いただいた開明獣さん、いつもありがとうございます!
ちこちゃん

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