ちこちゃん

落下の解剖学のちこちゃんのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
フランス人の夫が山荘にて転落死をし、その場に居たのは盲目の息子と犬のみ。山荘に居た妻に容疑がかかり、その裁判とそれによって明らかになる夫婦関係を描く映画。

妻を演ずるザンドラ•ヒューラーが熱演しています。ドイツ人妻とフランス人夫という言語の違う夫婦の難しさ、そしてフランス語での裁判を戦う妻の言語における難しさが描かれます

それと同時に妻の性的嗜好と浮気、夫との性生活の問題も横たわります。

その上、妻も作家であり、夫も作家という同じ職業であるということは、ある種の競争心や才能に対する嫉妬が夫婦間にあり、かつ、妻は売れている作家でありながら、夫は書くことができない状態にあるということが、より夫婦間を難しくしています

これら複数の問題に焦点を当てたことは、果たして観客に夫婦間の問題への興味や共感をえることにプラスになったのかは疑問です
もちろん、裁判の行方や、裁判での検察と弁護の闘いの鋭さは映画に観客を没頭させたものの、映画の冗長さは拭えないものでした
おまけに弁護士の妻への恋慕を描く必要があったのかは疑問です

最後の息子の決断に至る犬の一件は理解できるものの、息子の心情を描き切っているかというとそれも中途半端な感じがしました

映画がクライム物であるのか、夫婦の葛藤を描くものであるのか、二兎を追いかけ、両方とも突出するものがなかったように感じました。
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