オープニング、居酒屋で徳永(菅田将暉)と意気投合した神谷(桐谷健太)が、別れ際にさっそうと階段の手すりに乗っかり、ツルツルと滑り降りていく。
涼しい顔をしながらどこか危なっかしげで、終いには勢い余ってドテッとコケる。しかし神谷は即座に立ち上がり、階段の上で眺める徳永を振り返ることもなく、何事も無かったように駆け去っていく。
天然なのか、カッコつけたのか、それともその両方なのか。徳永にも、そして観客にも、ここで神谷の得体の知れない魅力が位置づけられる。
板尾監督、見事だと思う。
ラストのライブシーンはロマンポルノの濡れ場のようなもので、お笑い仲間に対して入れなきゃ収まらないという義務感が滲み出ているように感じた。
でも板尾監督の狙いはそんな所にはない。
神谷という、世間から理解されないからこそ日常にドラマをもたらすことのできる存在の、その偉大さに多大な敬意を表すべく板尾監督はカメラを回し、その意に十分過ぎるくらい桐谷健太は応えていると思う。
際立ち尖った様々な監督から重宝されてきた板尾創路だからこそ撮れた作品だと思う。