又吉直樹の芥川賞受賞作として話題になった作品の劇場化。原作未読、ドラマ版未視聴です。売れないお笑い芸人の徳永の芸人生活を通して、下積み時代の苦悩や売れるための試行錯誤がしっかりと描かれており、ストーリーも楽しめました。先輩芸人の神谷とのやり取りがいいですね。井の頭公園で雨の中楽しくなってハッスルするシーンが印象に残りました。
また、徳永を演じる菅田将暉と神谷を演じる桐谷健太の熱の入りっぷりが良かったです。特に中盤の真樹絡みのエピソードは秀逸でした。お笑い業界を扱ってはいますが、シビアな裏側を目の当たりにするとほとんど笑えないですね…。才能が有ってもコアな人気が有っても売れるとは限らず、芸風のキャッチャーな後輩に仕事を取られたりもする。タイミングや運の要素が絡むとはいえ、なかなか切ないものを感じました。
後半のスパークスのライブやラストの余韻、そしてエンドロールの主題歌は心に刺さるものがありました。難点は、淡々と進むのであまり派手な盛り上がりはないところと、終盤の神谷の迷走エピソードが失笑を買う可能性大なところでしょうか（※作中で徳永からも指摘されてはいますが）。人間ドラマとしてはよく出来ているので、全体的な満足度は高かったです。
