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火花のamuのレビュー・感想・評価

火花(2017年製作の映画)
3.6
時間が出来たので久しぶりに一日映画三本鑑賞に打って出たのだが、スプラッタものを続けて鑑賞した為、三本目はじんわり系と思わしき今作を選んだ。

原作も未読だし、前情報も一切無し。最近ぬかり続けていた監督の名はエンドロールならぬオープニングで記載されたために知ることとはなりましたが。

大声でめっちゃいいいい〜!!!と叫ぶよりも、瓶ビールを一口含んで喉を通してからぼそりと、…よかったよ。と静かに言いたくなるようなストーリーだった。芥川賞を獲るに相応しいのかはわからないけれど、何かに一生懸命になって、もがいたり、苦しんだり、喜んだり、泣いたり、少しでも笑ったりした経験のある人間なら、誰もが心に響くものがあったはずの作品だった。


…ネタバレ含みます…

スパークスのラストステージ、菅田くんの漫才は、笑いと涙が紙一重なことを表現するに相応しい最高の演技だった。

これまで何を演っても同じだなと思っていた桐谷健太だったが、頼もしく尊く素敵な先輩をこんなにも自然体に、本当に存在するかのように演じていて、素晴らしかった。

また、木村文乃演じる付き合ってはいないとする関係性の彼女が非常に可愛らしくて、別れは徳永くん同様私も哀しかった。俺とじゃなくてちゃんとした男見つけろよ、と言われても、本当は神谷が好きだったろうし、男女の、大人の、本当に大事なものに対する言動や行動そして本当の気持ちが痛いほど伝わる部分でもあった。その後の幸せそうに生きていた彼女の姿には、切なく、嬉しく、心にじんわりとくるシーンだった。

本当に大事なものは目に見えないんだよ、という星の王子さまのような、本気で向き合うと切なすぎて向き合う勇気が持てない本当の自分に真っ向からぶつかって、散って、そしてまた明日も、これからも、がんばって生きていこう、自分がいいと思ったこと、自分を信じて生きていこう、と思わせてくれる熱いお話だった。

火花、とは、そういう意味だったのかなと、レビューを書いて気づきました。
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