このレビューはネタバレを含みます
又吉直樹×板尾創路×菅田将暉
全員好きだ。
監督としての板尾作品は『板尾創路の脱獄王』のみ見たことがある。あれはかなり破茶滅茶アナーキーな感じで、私は好きだった。
本作では、いい意味でも悪い意味でも「冒険」していない印象。キレイにまとめられており、板尾監督の個性はあまり感じられない。
一方で、お笑い芸人でもある板尾監督だからこそ、より「火花」という作品を理解できているんだろうな、と感じる部分も多かった。
売れない芸人達の思い。
自分たちの信じている笑いが理解されない苛立ち。焦り。
未来への展望がまったく見えず、信念さえも揺らいでいく。
その裏で、キャラ重視の一発屋みたいな奴が売れていくことへの怒り。
なんじゃあれ？
なんであんなのが売れるんだ？
俺たちはあれ以下なのか？
鹿谷という象徴的なキャラクターの裏で、真剣に漫才に取り組んで、売れずに散っていった名もなき男たちが、きっと大勢いるんだろう。私はお笑いのことはあまり詳しくないが、あれに負けているんだと思うと、相当悔しいだろうなぁ。その辺の想いが十分伝わってきた。
板尾監督。
悪ふざけだけではなく、ちゃんとこういう演出もできるんですね。
ドラマ版は退屈になって途中でやめてしまったが、本作は菅田将暉と桐谷健太の演技がいいのか、まったく飽きずに鑑賞できました。
お笑いの世界だけではない。自分の信じた道が理解されないとき、どう折り合いをつけるか。本作からは多くの示唆をもらえる。
公開：2017年
原作：又吉直樹
監督：板尾創路
脚本：板尾創路、豊田利晃
出演：菅田将暉、桐谷健太
