おーたむ

オールド・ボーイのおーたむのレビュー・感想・評価

オールド・ボーイ(2003年製作の映画)
4.3
「お嬢さん」から、パク・チャヌク監督つながりで、本作を鑑賞してみました。
ううむ、面白い作品には違いないけど、こうもどぎつく、後味悪いとは。
劇物ですね、これは。

「15年間監禁されて解放された男が、自分が監禁された理由の解明を試みると同時に、復讐を決意する」というあらすじからしてかなり面白いんですが、これは物語の一面に過ぎません。
作品が進行していくにつれ、話はもう一つの面…というか、主人公ではない別の人物に乗っ取られていきます。
あらすじのとおり、本作は復讐譚であり、その軸は最後までブレないんですが、あらすじから想像できるような結末にはたどり着かず、どんでん返しと言っていいような方向へ転がっていき…。
そして訪れる圧倒的戦慄。
どう表現して良いのかわかりませんが、少なくとも、衝撃的な作品であるということは間違いないと思います。
凄いです。

演出面は、「お嬢さん」で体験したパク・チャヌク節の、原点を見てる感じ。
ブレーキ踏むのを忘れたんじゃないかってくらいの暴力&エロスが生む異様な迫力には、目眩がしてきます。
私は、人体が切り離されるみたいな描写にテンション上がったり狂喜したりするような性癖がないので、なんだかもう、どっと疲れてしまいました。
一方で、序盤ではけっこうコミカルなシーンも配置してあったりして、鑑賞者がスムーズに作品へ没入できるよう、しっかり気配りされている印象も受けます。
膨大な熱量を、緻密にコントロールしながら放出する手腕を見せつけられると、やはり名匠なんだなと思わされますね。
まあ、名匠という単語を使うには、この監督、尖りすぎている気もしますけど。

娯楽作品、しかも復讐譚であるにもかかわらず、鑑賞後にカタルシスではなく暗澹とした気分を残す作品というのは、かなり異様だなとは思います。
復讐の虚無をこれ以上ないくらいにどす黒く描いた本作は、腹の中に鉛のかたまりでも放り込んでくるかのように、見る者に重たい衝撃を残す、強烈な存在感を持った作品でした。
一つ言えるのは、しばらく再鑑賞はしないだろうなということですかね(笑)
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